オレって実は凄いのか?

『レイカ、ちょっと良いか?』


「リオン君久しぶり〜

 少し大きくなったかな?」


 いや1週間前にも会ったろオマエ。

 何だかんだでレイカは頻繁に家に来る。

 まあ保護観察官やってる訳だから来ないわけにもいかんわな。


 因みにレイカは普通の声のトーンで「異世界語」で話しかけてくる。

 既に異世界語をマスターしたオレに、前世の言葉を小声で話す必要が無くなったのだ。


『今日はどんな用事で来たんだ?』

「今日はお母様に頼まれたんだよ。

 少し家を空けなきゃならないから子守をお願いってね」


 そうかそれは都合が良い。

 しかしあんな事が有ったのに、よくレイカに頼む気になったな〜


 母さんが家を出た後レイカに革袋の中身を見せる。


『こいつを見てくれ、どう思う?』

「凄く……光ってる?

 え? なに! 魔法使えるようになったの?」

『まあ昨日からだけどな。

 で消えねーんだけど?』

「え! 昨日からって随分時間経ってるよね?

 それで消えないって……

 しかも初めて成功した魔法で?」


 う〜んと唸りながらレイカは頭を抱えてしまった。


「取り敢えずこの石預かって良い?

 調べてみるよ。

 ただ私も魔法にはあんまり詳しく無いから期待はしないでね!」


 いやオマエ一応魔法使い名乗ってるんじゃ無かったのかよ……


 レイカからの回答待ちでその間魔法の練習も自粛した。

 自分の力量が測れないんで下手な事は出来ない。

 大人しく待つ事に決めたのだ。


 2週間程してやっとレイカが現れた。


『随分時間掛かったな?

 何かわかったか?』


 レイカはオレが魔法を掛けた石を革袋から取り出す。

 驚いた事にまだ光ってやがる。


「チョットこれヤバイかも」


 レイカは若干青ざめた顔で言ってきた。


『ヤバイって何が……』

「多分これこのままだと消えない」

『は? どう言う事だ?』

「光ってる石の表面を良く見てみて。

 何か模様みたいのが有るでしょ?」


 眩しくて良く見えないが、言われてみると確かに何か見える。


「これ術式だよ。

 石自体に術式が刻み込まれてる。

 今この石は永遠に光を発し続けるマジックアイテムになってるって事」


 えぇ〜オレ魔法掛けただけのつもりがマジックアイテム作っちゃったって事?


『マジックアイテムってそんな簡単に作れるもんなのか?』

「作れる訳ないよ!

 作るとしたら膨大な魔力と大量の触媒を使かうんだから!

 これは石に魔力を術式で封じ込めた状態……だと思う」

『何か歯切れ悪いな〜』

「これはこの世界に存在しない魔法の使い方何だよ。

 下手すると魔法体系を根底から覆すような恐ろしく危険な物だよ?

 一体どうやったのさ!?」


 オレは魔法を使えるようになるまでを事細かに説明した。

 そしたらレイカはまた頭を抱え込んでしまった。


「つまり何?

 君は無詠唱でしかも頭の中に術式を描いて魔法を使ったっての?」

『まあ正規の方法じゃない事は分かってる』

「メチャクチャだよ!

 大体この世界に無詠唱で魔法を使える人何て居ないよ!

 それに複雑な術式を一語一句間違える事なく頭の中で書き上げるって何さ!

 そんな化け物存在しないよ!」


 いやここに居るんだが……


「とにかくもうそんな魔法の使い方しちゃダメだからね!

 これは私の方で処分しておきます!」

『処分ってどうするんだ?』


 そう聞くとレイカは懐から釘を取り出した。


「幸い魔法の効果を消す方法はわかりました」


 そう言うと手に持った釘で石の表面を削る。


「術式を破壊すれば魔力は拡散してただの石に戻ります。

 後は念の為術式が完全に見えなくなる程度に石を砕いて川に捨てます」


 そしてキッとオレを睨み付け、


「良いですね! 二度とやらない! 約束ですからね!」


『は、はい』


 久しぶりに怒られちゃったぜ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る