オッサン少年になる
5歳になったから冒険者目指す-1
早いもんで転生してから5年の月日が流れた。
今日はオレの誕生日。
なので思い切っておねだりをしてみるつもりだ。
折角剣と魔法の世界に来たからには両方使いこなしたいじゃん?
ああ、魔法の方は3歳頃で初級は習得済み、で今は中級にステップアップ中。
もちろん両親はオレが魔法を使える事は知らない。
約束はちゃんと守ってこの世界のやり方で使えるように努力して矯正した。
ただ今でも気を抜くと頭の中に魔法術式が浮かんで来ちまうんで気を付けないと。
「リオーンご飯よー」
母さんが呼んでる。
「はーい今行くー」
テーブルに来るといつもより豪華な食事が並んでいる。
父さんは既に席に着きお酒を飲み始めていた。
父さんは体に似合わずお酒には弱い。
なので今日みたいな特別な日じゃないとお酒は滅多に口にしない。
因みに母さんは逆にザルだ。
どんなに飲んでも酔ったところを見た事が無い。
コンコンっとドアをノックする音。
ガチャリとドアを開けノックの主を迎え入れる。
「いらっしゃいレイカさん」
「やあレイカよく来てくれた」
「今晩はレイカさん」
オレ、父さん、母さんが順に挨拶する。
「今晩は、本日はお招き預かりありがとう御座います。
パウンドケーキを焼いてきました、宜しかったら皆さんで召し上がってください」
そう言いながら腕に下げていたバスケットを手渡してくる。
こいつ意外と料理得意なんだよな、ポン子のくせに。
あ、そうそう。
例の思考伝達強度はオレが普通に喋れるようになった時に下げさせた。
アレはアレで便利だし幾度もお世話にはなったが、やはり気持ちの良いもんじゃ無いからな。
皆でテーブルを囲み「誕生日おめでとう!」の掛け声で食事が始まった。
母さんの手料理はいつも美味しいけど今日は更に美味しく感じる。
きっと今が凄く幸せだからだろう。
食事も進み最後のデザートになった時にレイカが、
「これ私からの誕生日プレゼントです」
と言って長方形の箱を渡してきた。
開けてみると中には刃渡り20cm程のダガーナイフが入っている。
「刀身は銀で出来ています。
銀には魔除けの効果も有りますので、お守りにと思いまして」
鞘から抜いて光にかざすと銀色の刀身が美しく輝いている。
鞘やつかの部分にも銀の装飾が入っており実用品と言うよりはレイカの言う通りお守りや美術品として作られた物だろう。
「ありがとうレイカさん。大切にします!」
そう言ってニコリと笑うと、レイカは「はうっ!」とか呻いて顔を赤らめ下を向いてしまった。
なんだレイカのやつここに来てまたコミュ障再発か?
そんな事を考えながらオレは母親譲りのブロンドヘアーをかきあげる。
そんなオレの仕草をレイカは下を向いたまま視線だけチラチラ送ってくる。
変なヤツ。
すると今度は父さんと母さんが話しかけてきた。
「私達には何をおねだりするつもりだ?」
「リオンったら何度聞いても当日まで内緒って言うから」
来たこのタイミングだ。
「父さんと母さんにお願いが有ります。
僕に剣と魔法を教えて下さい!
僕は将来冒険者になりたいんです!」
さあどうだ。
父さんと母さんは暫く顔を見合わせていたが、お互い頷き合って立ち上がると例の地下室に降りて行った。
数分で戻って来た二人は手にそれぞれ短めの剣と小さな木の杖を持っている。
「これはショートソードと呼ばれるものだ。
お前の体格ならまずこの位だろう。
これをまともに使いこなせる様になったら更に違う武器も教えよう」
言いながら父さんはオレにショートソードを手渡して来た。
全長は80cm程で刃渡りは60cm程、飾り気は無く実用一点張りの黒い鞘に入った剣はズッシリと重い。
レイカから貰ったダガーナイフとは正反対だ。
「これは魔法を使う時に集中力を高めるのに使う杖よ。
正確にはワンドと呼ばれています」
母さんが手渡して来たのは長さ30cm程の木製のワンドで、手で持つ柄の部分には細い皮紐が巻き付けてあり、柄の頭部分には赤い小さな宝石が埋め込まれている。
「でもリオン、あなた魔法はもう使えるのでしょう?」
オレはその問いに驚いて母さんの顔を凝視してしまう。
「母さんを甘く見ないで欲しいわね。
あなたが私の魔法書を盗み見してるのは気が付いていました。
それに、日に日にあなたの魔力量が増えて行くのですから気が付かない訳がありません」
参ったな母さんにはバレバレか。
「ですが独学で変な癖が付いていたら困るので母さんが基礎から教え直します。
良いですね?」
父さん、母さん……
「ありがとう!
僕頑張って二人に負けない様な冒険者になるよ!」
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