スキル発動!その名は努力-3

 よーし次の目標は自由に動けるようになる! だ。


 次の日からオレはとにかく身体を動かした。

 手足を動く限りバタつかせる。

 頭は動かないので首から下を左右にグイグイ動かす。

 数日間ずっとそんな事を続けていると……


 ついにその時が来た!

 グリン!

 ポテン……


 身体が半回転しそれにつられるように頭も回転する。

 そうついに寝返りがうてたのだ!

 オレは今うつ伏せ状態だ。

 仰向けとうつ伏せでは状況が大きく一変する。

 仰向けでは手足は役立たずだがうつ伏せでは違う。

 手足に力を入れ上体を起こし踏ん張る。

 ぬおー!

 どりゃーっ!

 体全体がほんの少しベットから浮き上がる。

 膝立ちで両手を付いた格好……


 そう、ハイハイの格好をする事が出来たのだ!

 こ、これで手足を交互に動かせば前に進む事が出来る……が!


 限界〜〜

 ペショッと潰れプルプル震える手足を投げ出す。

 体重を支えるにはまだ圧倒的に筋力が足りてない。

 第一ハイハイの格好になるまでに体力を使い果たしてしまう。

 先ずは体力を付けないと……

 ならば!


「ふえ〜〜〜」


 オレが泣けばすぐに母さんが飛んでくる。

 やはり母さんは美人で優しい、大好き!


 しこたまオッパイを飲みグッスリ寝る。

 体力を回復させてまた身体を動かす。

 頑張れ! オレ!


 それから更に数日後……

 自分でも解る位体力が付き、コツも掴んだのでハイハイスタイルへの移行はスムーズに行えるようになった。

 そして今日はついに一歩前へ出る事は出来たのだ!

 最初の一歩さえ踏み出せてしまえば後はどうとでもなった。


 木の柵で囲われてベビーベットの中を縦横無尽に歩き回ってやったぜ。

 勿論両親には内緒だ。現在オレは生後2.5ヶ月、どう考えたって成長早すぎだ。


 レイカに調べて貰った情報によると、首が座るのに2ヶ月、寝返りが5ヶ月、ハイハイが8ヶ月、歩き出すのが10ヶ月。

 大体その位との事だ。

 本来ならやっと首が座った頃になるわけだ。


 まあ見付からなければ良いだけの事。


 オレはベットの柵に付いてるフックに手を伸ばす。

 このフックを外せば柵が開く事は知っている。


 フックを外し軽く柵を押してやれば、パタンと柵が外側に倒れ視界が開けた。


 オレは自由だフリーダーム!

 しかし……


 た、高い……


 ベットの縁から下を覗くと床までかなりの高さが有る。

 まあそうだよな。

 子供を出し入れする時に腰に負担が掛からない高さ。

 両親共身長は高い方なので自分達に合わせるとベットの高さも自ずと高くなる。

 結果……


 床まで1m近く有るな……


 どうする、諦めるか?

 いやここで諦めたら今までの苦労が水の泡だ。


 よし!

 オレは枕や布団、マットレスをなるべく積み重なる様に床に落としていく。

 これでクッションが出来た。

 余程おかしな落ち方をしない限り大きな怪我はしないだろう。

 頭から行くのは流石に怖いので足から慎重に下ろして……


 ズリッ!


 あ、やべ手が滑った。


 そのままオレは下に落下して行く。

 浮遊感と共に天井が遠ざかる。


 あ〜この感覚知ってるわ〜

 前世の最後の瞬間だわ〜

 時間がやたらゆっくり流れてなかなか地面に付かないのな。

 また死ぬのかな〜

 これで死んだら自殺扱いになるのかな?

 父さんと母さんを悲しませるのは嫌だな……


 なんて事を考えていると、ボスっと言う音と共にオレのお尻が着地した。

 痛みは特に無い。

 むしろ全然平気、床にばら撒いた寝具はオレの狙った通りの効果を発揮してくれた様だ。


 よ、良かった〜

 死ぬのは2回目なので怖くは無い(と言えば嘘になるけど)が、オレに愛情をこれでもかって位注いでくれる両親を悲しませたく無い。


 前世に未練は微塵も無かったが、こちらの世界では既に失いたく無いものが出来てしまっている。


 おかしな話だ。

 まだたった数ヶ月しか経っていないのに、37年生きた世界よりオレはこの世界が好きになっていた。


 さて! 異世界探検第一弾の始まりだ!

 マイホームを攻略してやるぜ!


 こうしてオレは念願の自由を手に入れたのだった。

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