スキル発動!その名は努力-1

 明日から本気出す!

 有言実行のオレはレイカの家から父さんに連れ帰ってもらってから直ぐに……

 いや直ぐは無理だった。

 つーか夜通しレイカと話してたんだぜ? 流石に電池切れだ。

 飯食って寝たよ。

 でも、さすが赤ん坊の身体って回復力が凄いね。

 寝ただけでちゃんと体力が戻ってる。

 ついこの前までオッサンだったオレには信じられないよ。

 徹夜明けの日なんざろくに動けなかったもんだ……

 それでも会社には行ってたんだけどね!


 さてではいよいよスキル発動の時が来た。

 先ず何はともあれ言葉だ、この世界の言葉を覚える努力を始める。


 とにかく両親を観察し口の動きを真似し発声の仕方を覚える。

 常に会話に耳を傾け、良く使う単語を聞き分け覚える。

 読み書きに関しては取り敢えず今は置いとこう。


 そんな事を数日続ける内に、オレの名前はリオン。

 父さんの名前はグラムス。

 母さんの名前はフィオーネ。

 と以上の事が解った。

 特にオレの名前は両親共頻繁に口にするので一番に覚える事が出来た。


 因みにレイカにどうやってコッチの世界の言葉を覚えたのか聞いたところ、


「この思考伝達型同時翻訳アプリで〜」


 とか何の参考にもならない事を言い始めやがったので即刻無視した。


 両親が寝静まってからは発声の練習だ。

 とにかく覚えた3人の名前を繰り返し言い続ける。

「rお、くらむ、ひおー……」

「りお、くらーしゅ、ひおーね……」

「りおん、ぐらむしゅ、ひおーね……」


 歯が生えてないせいかやや発音に難ありだが練習の甲斐あって何とかものにした。

 しかしこれを両親に披露するのは流石にまだ早いだろうか。

 赤ん坊ってどの位から喋るんだ?

 うーん今度レイカに聞いてみるか。


 暫くそんな事を続けているとかなりの数の単語を覚える事が出来両親の言ってる事も随分解るようになって来た。


「リオン〜jヂたのね。

 朝jシネvskですよ〜」


 母さんが起きたオレにそう言いながらお胸を出して来たので食事的な言葉だったのだろう。

 父さんもやって来て母さんの肩を抱きながら、


「リオンおfッジャイ!

 かタhdjcイsjはパパのだからな!」

「jフィsjグラムスったら。

 あなたはfジsjまでおfカhfj」


 父さん子供の前で朝からイチャつかないで!

 母さんもちょっと赤くなって満更でもないって顔しないで!

 完全に解らなくても前後の文脈から何言ってるか何となく解るんだからさ!

 まあ向こうにしてみればまさかオレが言葉を理解しつつ有るなんて思っても見ないんだろうけど……


 更に数日が過ぎた日の昼過ぎにレイカがやって来た。

 レイカはオレが産まれてからちょくちょく顔を出している。

 どうやら母さんに産後の回復を助ける滋養強壮の薬を持って来てくれているらしい。

 良い子なんだよな〜ポン子だけど。


 レイカに聞きたい事も有ったし丁度いい。


『レイカ、ちょっと話せるか?』


 レイカはチラッとオレを見た後母さんと二言三言話してからコッチに来る。

 母さんは「少しの間宜しくね」と言って部屋を出て行った。


「お母様には奥で少し休むように勧めたわ。

 その間私が貴方の子守をするって言ってね。

 やっぱり子育てって大変なのね、ややお疲れ気味だったわよ」


 そう小声で呟いて来た。


『なあ赤ん坊って何時頃から喋るようになるもんなんだ?』


 もっか言葉を練習中のオレとしては早く両親の前で堂々と喋りたくてウズウズしているのだ。


「チョット待ってね調べてみるから」


 懐から取り出した例のタブレット……じゃ無い!

 何か小さい。

 スマホか?


「あ、これ?

 携帯用だよ!

 機能はほぼ一緒なんだけど大きいやつの方が私的には使い易くて好きかな〜」


 そう言いながらスイスイタプタプ。


「えーとね〜早い子で9ヶ月位。

 遅い子でも18ヶ月位らしいよ」


 9ヶ月!

 え〜オレまだ産まれて半月も経ってないんですけど……


「個人差も有るみたいだけどそれにしたって早過ぎるよね。

 って、もう喋れる位言葉覚えたの!?」


 レイカも流石に驚いている。

 まあそうだろう、何せ自分自身が一番驚いているからな。

 スキルのお陰とは言えこんな短時間で、今まで聞いた事もなかった異世界語を話せるようになったんだからな。


「はえ〜凄いね〜流石レアスキルだね!」


 いやオレも結構努力したんだけど?


『仕方が無い、話すのはもう暫く我慢するか。

 個人差が有るって事だから多少早くても良いよな!

 取り敢えず6ヶ月を目処に少しずつ喋って見よう』


「それでもまだ早いんじゃ無いかなぁ……」


『そうか? まあ良いありがとな付き合ってくれて。

 それと母さん休ませてくれた事も、な』


 そうオレが素直に感謝の言葉を伝えると、レイカの表情が一変しやたら蕩けた顔でオレを抱き上げ……


 ムギュ〜〜〜


『!!!!?』


 力一杯抱き締めて来た。


「素直なリオンちゃん可愛いー

 お持ち帰りしたい!」


 ちょ、まて、くるし、でも柔らかい!

 息ができn、気持ちいi、オッパイで溺れ死ぬ!


 その後オレが気を失う寸前に騒ぎを聞き付け起きて来た母さんに助けられた。

 もちろんレイカは母さんにこっ酷く説教を食らって帰って行った。


 危うく生後半月で寿命を全うしそうになったわ!


 夜父さんが一冊の本を持って帰って来た。

 なんでも旅の行商人から買った児童書だとか。

 寝る前にオレに読み聴かせると言ってる。

 母さんはまだ早いと言ってるがオレ的には有難い。


 文字を覚えるチャンスだ!

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