出張死神-1

『あ、うん、何かゴメン』


 うん、何か知らんがオレのせいでえらい迷惑掛けたみたいだ。

 これからはポンコツ呼ばわりは辞めておこう。

 ワンランクアップさせてポンコ、何ならポン子位にしとくか?


「何ですかポン子って……

 私の事ポンコツだって思ってたんですかー!」


 やべ思考読まれてるんだった。

 メッチャ顔赤くしてますます涙目でオレを睨み付けて来る。

 相当怒ってらっしゃるようですが、元が可愛いから怖くは無い、が罪悪感が凄い。

 そうなんだよ、こいつ可愛いは可愛いんだよな〜

 オッパイ大きいし。


「な、何ですか突然可愛いとか……

 そ、そんないきなりおだてても許しませんからね……

 そそそれと余りジロジロ見ないで下さい! セクハラですよ!」


 さっきと違う意味で顔を赤くして下向いてモジモジし始めちゃった。

 後胸を両腕で隠してるけど隠し切れてません。

 むしろ大きいのが強調されて目のやり場に困るので勘弁して下さい!


 しかしこいつ心配になるレベルでチョロいな。っとそれはさて置き話を進めよう


『色々迷惑掛けたみたいで悪かったよ、取り敢えず話を進めてくれ。

 状況説明と今後の事だっけか?』


 レイカはコホンっと一つ咳をすると、まだ赤みが残った顔でなるべく平静を装い仕事モードになる。


「先ず状況説明です。

 今貴方の住む場所は森の中に有る小さな村です。

 人口は15世帯で40人程、半自給自足を行なっており主に林業で生計を立てています。

 伐採した木材や、自分達で育てた野菜をここから徒歩だと3日掛かる都市で売ったりしています。

 それで得た収益は村人全員で均等に分配していますね」

「次に貴方のご両親ですが、お父様もお母様も元は名を馳せた冒険者です。

 お父様は両手剣を豪快に振るう剣士。

 お母様はエルフで強力な魔法を使いこなす魔女でした。

 今は冒険者を引退して、村の警護や木の伐採何かをしながら穏やかに生活しています。

 そうそう、お二人が村に越してきたのは3年程前になりますので村では私の方が先輩です」


 何か最後の方ちょっと得意げに言ってるが割とどうでも良い。

 それに3年前ならお前まだ村に馴染んで無い頃じゃねーか。

 そんな事より……


『エ、エルフ?

 エルフってあのエルフ?』


 エルフと言えばファンタジー物に良く出て来る種族。

 男女とも美形で人間とは比べ物にならない位長寿。

 尖った耳が特徴で人里離れた森の中に住む妖精みたいなイメージだ。


「概ね貴方の想い描くエルフと同じですね。

 寿命は無いに等しくお母様を見ての通りとても美しい外見をした種族です。

 ですのでお母様もああ見えて、実は結構お年を召していますよ?」


 そっか〜父さんの方が年上かと思ったら、実は母さんの方がずっと年上だったのか。

 見た目ですっかり騙されたぜ。

 いや母さんが美人な事に変わりは無いんだけどね!


「本来異種族間、特にエルフとの婚姻は非常に珍しい事です。

 余程お互い惹かれ有ったのでしょうね」


『ん? 何で? 別に好き合ってるなら種族とか関係無くない?』


「考えても見てください。

 エルフは人間を含む他種族とは比べられない程長命なんです。

 つまりどんなに愛した人でもほぼ間違いなく自分より先に居なくなるんです。

 更には自分の子供や、もしかしたら更にその子供すら看取らなければならないんですよ?」


 あ〜それは辛いわオレなら耐えられん。

 まあ子供どころか彼女すらいた事無いオレにとってはあくまで想像でしか無いけど……


 でもオレは二人の子として生まれた。

 つまりそう言う事だ。


「なので貴方はエルフと人間の間に産まれた前例の少ないハーフエルフという事になります」


 おおーハーフエルフか。

 なんかチョットカッコいいぞ!


「どうやら貴方にエルフの種族的外見特徴は出ていないみたいですね。

 耳も尖っていないし肌色も特別白いと言う事も無く、言われ無ければハーフとバレる事は無いでしょう」


『バレると何か問題有るのか?』


「先程も言いましたが混血は非常に稀なんです。

 しかもエルフとの混血は、希少動物扱いで捕獲対象になるかも知れません」


『うえ、マジか〜

 まあそう言う事なら見た目でバレなそうなのは有り難い。

 所でオレの寿命ってどうなるんだ?

 エルフとの混血だとやっぱ人間より長命だったりするのか?』


「52年です」


『え? だってエルフとの混血なら少しくらい延びたr「52年です」


 メッチャ食い気味に断言されちゃったよ。


「52年なんです!

 誰が何と言おうと私がそう決めました。

 52年でしっかり寿命使い切って頂いて私がしっかりあの世にお連れします!

 って言うか貴方がしん寿命を全うしてくれないと私の出張も終わらないんです!」


 わ! ひでーこいつ今死んでって言い掛けた。

 この、鬼! 悪魔! あっ死神だったわ!

 つーかお前に決定権無いだろ!

 ……無いよな?


『そこは取り敢えず置いとこう。

 で、結局お前は何でここに居るんだ?』


 レイカはハァ〜〜と大きなため息を吐いてから、


「保護観察官として現地に滞在し貴方がまた自殺バカな事をしない様に見守り手助けするためです」


 保護観察って、まるでオレ犯罪者みたいじゃん。


「犯罪者みたいじゃなくて犯罪者なんです!

 知りませんでしたか? 自殺は罪なんですよ! 貴方は前科一犯です!」


 何てこったオレは知らずに犯罪者になっていたのか……

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