第13話自覚

 僕は少女の腕を引っ張り、宿屋と思わしき建物の隅に連れてきた。


「ちょっと、本当になんなの? 変なことしようとしたらタダじゃ済まさないから!」


「ご、ごめんなさい。決していよこしまなことをしようとか、そんなことは考えてないので」


「じゃあなんなの? 私、今忙しいんだけど!」


「忙しい? なんかしてたんですか?」


 ポニーテールの少女は、そわそわとして落ち着かない様子だ。


「えぇ、多分ここにきてからだと思うんだけど落し物をしちゃってね。それを探してたらあんたに声をかけられたの」


 なるほど……。だから最初、地面を向いてキョロキョロとしていたのか。

 僕は落ち着かない少女の顔を見ながら。


「わかりました。僕もあなたの落し物を探す手伝いをします」


 話はそれからでも遅くないし、ここは彼女に抱かれてしまった不信感を拭う方が先決せんけつだろう。

 

「それで、何をなくしたんですか?」


 僕がキョロキョロと村の中を見ながらそう聞くと、


「な、何が目的なの?」


 少女は怪しい人物を見る目になっていた。あれ?

 普通だったら「ありがとう」とお礼を言ってくれる場面じゃないのか?


「いや、別に目的なんて特には……」


「うそ! 無償で見返りも求めずに助けてくれるなんて、そんな優しい人間この世には存在しないの!」


「いや、僕は好意のつもりで……」


 僕の言葉に、少女は耳を傾けてくれない。


「あんた頭悪そうだから教えてあげるけど、この世は”偽善者”か”悪人”の二種類以外はいないの。善人なんて存在しないのよ。わかったら何が目的か言いなさい!」


「いやそう言われても……」


 この人は人間不信なのか?

 てか目的って……。ないと言えば嘘になるが、まあそれを言えばいいか。


「あのじゃあ、探し物が見つかったらお話を聞かせてもらえませんか?」


「話? 何話って? あんたに聞かせる話なんて一つもないわよ!」


 全く話が進まない。ここまでめんどくさい人もなかなかいないと思う。


「あの、とりあえず何を探してるかだけ教えてください。あとは勝手に探すんで」


「はぁ? 何その呆れた表情。なんか私がめんどくさいみたいな顔、やめてくんない?」


 自覚ないのか? 

 ここまでくると病気か何かじゃないかと疑ってしまう……。カナさんもだいぶ頭がおかしかったけど、この人も大概だな……。

 

「私が探してるのはストラップよ。猫のストラップ」


 猫のストラップ……。猫ってのは聞き覚えがあるけど、どんなものかは思い出せない。

 でもストラップはなんとなくわかる。


「わかりました。じゃあ見つかり次第、また声をかけるので」


「は、え、ちょっと」


 ポニーテールの少女が何か言いかけていたが、これ以上つっかかって来られるのもめんどくさいので僕は無視をした。

 とりあえず、ちゃんと話を聞いてもらえるぐらいの信頼は勝ち取りたい。

 そう思いながら、僕は猫のストラップを探し始めた。















 

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