第10話言葉と単語
「それでどうします? まずは聞き込みとかですかね?」
「いや、それは今まで何人にもやってきたけど成果は出なかったよ。人に聞く以外の方法が思いつかなかった私は、しらみつぶしにこの世界中の人たちに聞きまわったんだけどね……」
「そうですか……」
今の話を聞いて、僕は違和感を感じた。昨日顔を見た感じ、カナさんはまだ十代後半ぐらいの年齢のはずだ。
なのにどうして世界中のほとんどの人から聞いたなどと言っているんだ?
話を盛っているのか?
もしかして見栄っぱりなのかもしれない。時間的にもそんなことは不可能だと誰でもわかるのに、そんな嘘をつくなんて。
でもここで「嘘ですよね?」なんて言ってみろ。ロクなことにはならないだろう。
それに未成年っぽい少女が、こんな物騒な世界を旅しているなんて、親御さんは何も言わないのだろうか?
カナさんは不自然な点が多すぎる気がする。今までの彼女に一体何があったのか……。
その背景を想像することはできないが、きっと壮絶な過去があったに違いない。
だから彼女がまたおかしなことを言っても、何も言わずに首を縦に振ろう。僕は自分の中の考えをまとめると、カナさんに向き直り。
「あの、それじゃあどうしますか?」
「うーん……そうだねえ。私の目標を達成することよりも、君の記憶を戻す方が簡単だと思うんだよね。だからまずは、君の記憶を戻す方を優先したいと思ってるんだけど、それでいいかな?」
「はい! もちろん」
やっぱりこの人にあってよかった。たまにおかしなことをいう人だけど、優しい方だ。
「それじゃあ結構長く話してしまいましたけど行きましょうか」
「あぁ、私の後をしっかりとついてきてくれ」
そう言ったカナさんの三歩後をついていく。
「それで、何をするんですか?」
村を出て、森の中を歩きながらこれからのことについて質問する。
「んーそうだね。とりあえずは、
「天界……ですか……?」
また変なことを言い始めたぞ……。カナさんは自分の知っている事は、他人も知っていて当然と思ってる節があるな……。
「うん、天界。君の記憶を取り戻すためには、君の知り合いに会うのがいいと思うんだよね。親しい者に会えることができれば、もしかしたら記憶が戻るかもしれないだろ?」
あれ?
天界の説明なし?
天界がなんなのかわからないから、他の説明がほとんど頭に入ってこなかった。
この世界では、そんな当たり前のことなのか?
でも僕は全く聞き覚えないしな……。思えば僕は、記憶喪失だけど言葉や単語はなぜか理解できる。
でもこの世界の常識であるはずの、天使や悪魔なんて単語は全く聞き覚えがなかった。
まあ今は考えても仕方ないか……。
多分記憶を取り戻せば全部わかるはず。
僕は天界とやらの説明は追求せず、カナさんの後ろを何も言わずについて行った。
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