第3話
出会い
ひどく酔っていた。仕事終わりの疲労に耐えられず、一人で立ち寄った安っぽい居酒屋。サラリーマンにはありがたいお値打ち価格のビールを飲む。暇つぶしに動画サイトで適当な釣り動画を流していると飲み慣れたいも焼酎が運ばれてくる。平日ということも相まってカウンターにはくたびれた自分が1人。花の金曜日を待つ余裕は無い。
「お待たせいたしました。鶏の唐揚げでーす。」やる気のなさそうなアルバイトが運んでくる。きつね色に揚げられた湯気がのぼる唐揚げ。油でツヤツヤと橙色の店内照明を跳ね返している。注意深く息を吹きかけながらかじりつく。途端、口内に旨みと油が流れ込む。もも肉ならではのぷりぷりとした食感と、カリッとあげられた食感の良い衣が疲れた体に染み渡る。本能におもむきビールを流し込むとここ1週間のストレスなどは溶けて消え去った。意外と酒のアテが美味いせいで一杯、二杯、三杯とグラスを開けてしまった。体の芯が溶けて熱くなった頃、店を出てやっと帰路につく。三大欲求のうち大きな一つは満足すぎるほどに満たされた。
真っ赤な電車の迎えにあずかり、最寄り駅までの心地よい揺れを楽しむ。反射した車窓と向こう側の夜空がちょうど水族館に似ている。赤い顔をした自分はさながらベタといったところか。
「酔ったなあ、」
目を閉じて少し揺れて、記憶はここで途切れた。
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