第2話

明日渋谷で会える方募集してます!dmください!


都内でいちごで募集中です。よろしくお願いします。身長○○cm体重○○Kgです。


金欠で始めてみました(´;ω;`)条件は画像見てください!


可愛らしいイラストと、体の一部分が映されたアイコンが並んで呟いている。それは僕が今まで見ていた承認欲求を満たす為の写真達とは違う。オブラートに包まれた業務的なアナウンスだった。親指でタップすると年齢も分からない男性と恐らく未成年の女性が挨拶を交しdmへ移動していく流れ作業がどこのツイートにも連なっている。何が基準が分からないが選ばれる男性と返信を返されずぽつんと誘い文句だけが宙に浮く男性がいるのは現実と変わらない。SNSは間違いなく現実の一種なのだ。正直怖かった。ただの興味だけで傍観者から消費者に変わる勇気はなかった。「パパ活 犯罪」のフレーズで調べると相手が未成年だった場合犯罪であり、実刑を受けることもあると書かれていた。なら成人であればなにも問題ないのでは?そう思った僕はその日から毎日成人済みとプロフィールに記載されているアカウントだけをお気に入りリストに追加していった。いつかdmを送る勇気が出る日までの僕だけのリストは甘く苦い箱庭だった。

 それからは少し暇ができるとリストを眺めては、不定期につぶやかれるパパ募集ツイートを見つけて返信の一つも打てない自分に瞬間的なもどかしさを感じる日々を過ごした。それでもアプリを閉じて落ち着いて考えると、素性も知らない女性と会って肌を重ねるなんてリスクが多すぎると思いなおす。もし騙されていたら、もし行為が終わったあとで未成年だと告げられたら、もし思った通りの人が来なかったら。画面越しの人間は現実とは乖離したフィクションであることを忘れてはいけない。いままで真面目に生きてきた自分にとってあまりに危険な、それでもそんなことを考える余裕が一瞬でも無くなるほどに魅力的な誘いは今日も画面を滑って流れて消えた。

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