第6話 学年一の美少女の様子が少しおかしな件

 翌日から、僕の学校生活は変わった。

 休み時間の度に朝比奈さんが訪ねてくるようになったのだ。ついでに言うと、あちこちから野次馬たちもおまけで付いてきていた。

 他愛もない会話に花咲かせ、チャイムが鳴る前に別れる。そんな日々をずっと送っていた。

 そして、そんな日々が続いたある日の最後の授業。バスケットボールのために着替えている最中のこと。


「もどっかしいなぁ~」

「何が?」

「お前と朝比奈様だよ!」


 達也がもう朝比奈さんに様付けしてる。というか、もどかしいとは?


「もどかしいって何だよ。普通に会話してるだけだよ」

「それだよ! もうお前ら付き合ってしまえ! アイスクリーム補正があるから告白するだけでいいんだよ!」


 聞いたことない補正を持ち出されても……それに、告白とかしたら朝比奈さんに迷惑だしね。

 達也の戯れ言に適当に相づちを打ちつつ、体育館シューズに履き替えて体育館に入る。

 今日のバスケットボールは合同授業だ。それも、朝比奈さんのクラスとの。

 全員が並んだところで、先生が授業開始の挨拶をする。


「はーい始めるぞ~。今日はバスケットボールな。準備運動したら開始! チームは分けてあったけど……な? 分かるな?」


 おい……岩田先生。それはどういう意味かな?

 やめろ。周りも頷くんじゃない。

 そして、僕の目の前でチームが決まっていった。それも、男女混合でだ。校長室に駆け込んだほうがいいのか?

 分かってるだろう? 僕と朝比奈さんは当然のように同じチームにされた。

 赤面する朝比奈さんに近づき、声をかける。


「チーム同じだね。頑張ろう」

「あ、うん。頑張ろう」


 外野から熱々コールが飛んでくるが、無視だ無視。

 試合が始まった。ジャンプボールで先にボールを獲得した相手チームが攻め込んでくる。猛烈なドリブルをしながら突進してくるのは達也だ。


「うおぉぉぉっ!! 恋心破壊タックル!」


 何を言ってるのか分からないし分かりたくもない。ここまで拗らせたらもうダメだと思う。

 外野から「いいところ見せろよー」などと聞こえるが、余計なお世話だ。達也のドリブルくらい簡単に奪える。

 ボールを落とした瞬間を狙って腕を凪ぐ。手で包み込むようにボールを奪い取ると、敵ゴールまで一気に走り出す。

 何人かは気づいて防御に入るが、甘い。僕はマリオたちを使ってずっとイメージトレーニングを積み重ねてきたんだ。止められない。

 強く踏み込んでジャンプ。勢いそのままにダンクシュート。リングの中央にボールを通す。

 僕が得点を取れることは想定外だったのか、一瞬場が静まり返る。それは、朝比奈さんの拍手で沈黙が破られた。


「すごい! すごいよ!」


 その声を皮切りに、みんなから賞賛の声が送られてくる。その、悪い気はしないね。

 その後も、僕の活躍で得点をもぎ取っていく。相手と圧倒的な点差で勝利した。

 休憩になり、端のほうで休む。すると、朝比奈さんが隣に座った。


「北谷くんはすごいね。運動できるんだ」

「いや、ゲームの動きを再現しただけだよ」

「それはそれですごいと思うけど……でも、かっこ良かったよ」

「そう? ありがとう」


 ……会話終了。

 僕は視線を試合に戻す。すると、朝比奈さんが頭を振った。


「って違う! 話があるんでしょ私!」

「ど……どうしたの?」

「北谷くん! 今日の放課後に二階の西階段に来て!」


 これ以上ないくらいに顔を赤くしてそう叫ばれた。どうしたというのだろう?

 だが、お呼び出しだ。どんな用事かは分からないけど、きちんと行かないとね。

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