ねばねんば、ねちょちょ第3の指輪

もみじたちの集落より数キロ離れた森の中、ドラゴンハーフの男は切り株の上に座っていた。


ナイフに魔力を宿らせ周囲を切り開いて広場を作っていた。自分の仲間たちをそこに集め、ゆっくりと見まわす。


負傷をしていたが、命には別状なく、応急手当てはしてやった。たかが1人の小娘に奇襲とは言え遅れをとった事は、恥ずべき事だった。


彼は自分の胸元に手を入れる。取り出したのは黒い鎖に繋がれた銀色の指輪。


じっとその場を見つめる。指輪には琥珀色の宝石がはまっており、異様な妖気を放っていた。


「た、隊長?その指輪は」


1人のリザードマンがその様子を見て、恐れながらドラゴンハーフの男に話しかける。


「ん?」


周りの者たちも指輪を注視する。


「お前の予想通り、これは魔王さまより預かっているものだ。このナイフと同様にな。つまりは、お前たちがこれ以上使えないようだったらこの指を使わざるを得ない」


鎖を持つ手に魔力がたぎる。細かく指輪が振動し始める。部下たちは青ざめ、嘆願する。


「二度とこのような失態を犯しません」


「私は奮迅します」


必死になって訴えかける魔王軍の精鋭たち。しずかに嘆願する。


「…はじめから、がんばれよ」


魔力を込めて指輪の中身を解放する。


「うわぁああああ」


逃げ出したのは、ゴブリン。このゴブリンも隊を任されるぐらいの実力者ではあったはずだが、その表情には恐怖に染まっていた。魔力を使い、駆け出す。だが、瞬時に彼の姿は消え、木に叩きつけられる。


ゴブリンの頭は、現れた別の影によって鷲掴みにされ、ものすごい勢いで投げ飛ばされたのであった。木にめり込んだあと、ゴブリンの足がぶらりと力なくたれる。


「…に、逃げろ!あれはシカタロウのオークだ!」


「…シカタロウじゃない、今はおれのオークだ」


指輪に魔力をこめる。


「キサマ、シカタロウではないのか」


「悪いなオーク。あのシカタロウは死んだよ」


役立たずどもはこのオークの餌にしよう。指輪を通して、オークを支配する。


「…くわせろ…食わせろ…喰わせろ…!!」


阿鼻叫喚の騒ぎがしずかになるのに時間はかからなかった。


「さぁ、赤髪の女を狩りに行こうか」

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ぬちょライフ〜スライムマスター♀の異世界ぬちょねちょ生活〜 お花畑ラブ子 @sonic0227

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