ぷよんぷ 龍鱗
ドラゴンハーフその個体数は限りなく少ない。
しかしながら、ドラゴンの強靭さと人間の機動性が相まって、戦場では一騎当千の活躍をすることも多い。だが、半端者として迫害対象にもなりやすく、心を病んでいるものも多い。このドラゴンハーフも、親に捨てられ魔王に拾われ、腕っ節で周りをねじ伏せてきた。年齢こそ若いものの、扱いの難しい龍人化を使える希有な存在である。
「龍鱗30%」
腕をまくり上げて前に構える。次第に皮膚が変色し、爬虫類のそれへと変わる。黒く硬く禍々しい。高純度の魔力を帯びる。遠目でも立ち上る魔力に圧倒的な力を感じる。彼のその黒い腕は、目の前にそびえ立つドラゴンもどきの攻撃を次々と打ち払っていく。しっぽの一撃を腕の一降りで消しとばした後、苛立ちを隠せずに歯噛みした。
「こんなっ…ものがっ…ドラゴンではっ…ないっ!断じてないっ!!」
自分は半分しか竜ではないがその力強さに誇りを持っている。目の前の模造品を見ると怒りがこみ上げてくる。竜の鱗にまとわれた腕を振るたびにスライムは削り飛ばされていく。抵抗しなかったわけではないが、知性を失っている以上、この男の敵ではない。せいぜい、一、二枚の鱗を削り取れたところで痛くも痒くもない。あっという間に黒いスライムに覆われていたもみじの体が露呈する。魔力に焼かれ、至るところに火傷があった。もはや意識も定かでは無い。
「があああああ!」
そんな彼女を静かに見下ろし、腕を振り上げる。
「身の程をわきまえろ…人間っ!」
「…黒息(ブラックブレス)!!」
トドメを刺す前に邪魔が入った。彼ともみじの間に黒い炎が過ぎ去る。
「黒霧(ブラックミスト)」
黒い炎が煙となり、あたり一帯に広がる。ハーフドラゴンの男が腕を振ったときにはすでに女はおらず、遥か上空に黒いドラゴンの姿が見受けられた。
「ちっ!」
腕に魔力を集め、消し飛ばそうかと思ったが、あくまで今回は隠密行動であることを思い出し、竜の鱗の魔法を解いた。
「た、隊長…」
一度体制を整えてから、確実に相手を潰す。本国への応援要請をするために、書簡の準備を行う。彼の横顔にひび割れる竜の鱗のあとが、静かに疼いていた。
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