ぬるぬるめちゃめちゃ 第二幕開幕
深い深い森の中にいくつかの集落がある。今回の任務はそのうちの1つの制圧。
完全中立地帯であり無法地帯であるこの森の中での集落つぶしは他の2国には知られてはならない。一番力を待つ魔王は人間と交わした約束を守ることに固執している。もう1人は積極的に介入する事は無いが確実に状況を注視している。
うっそうとしげる森の中を20名ばかりの精鋭が進軍する。足音で人数が取られないように歩幅も歩数も一緒。魔力も感知能力者が周囲を警戒するために貼っている魔術以外は一切感じさせない。通常ならこの状況では、大抵の相手に気づかれることなく殲滅することができる。今なら小型のドラゴンなら倒せる気がする。
だが、今から向かっている集落は違うだろう。数ヶ月前にドラゴン目撃され、様々な国が調査隊を派遣した。ドラゴンは長寿ゆえに賢く、また力も相当強い。屈服させることができれば多くの犠牲を出したとしてもお釣りが来る。そういう見立てだった。
だがどの国の調査隊もドラゴン持ち帰ったと言う情報は入ってきていない。3つの国が管理する森の塔でも同様だ。その後ドラゴンが発見されたと言う報告は上がっていない。
わかっているのは以前小さな集落があった場所に大きな湖ができ、一回り大きくなった村ができつつあると言うことだった。
人間は自治を認められたとは言え大人数が集まる事は危険視されている。あの男が世界を荒らしまわったことで、人間に関する目が変わってしまったのだ。
疑わしきは潰せ
それが魔王様のお達しだった。魔王軍きっての猛者たちがこんな片田舎に集められるなんてよほどの事だ。全員感知防止のフードをつけているが、ゴブリンやオーク、コポルクの隊長クラス、ワーウルフもいる。このまとまりのない雑多な集まるよ混乱なく収めているのは、ひとえに先頭を歩くこの男の力なのだろう。逆だった黒髪を持つハーフドラゴンの男は魔王軍の四天王の1人だ。見た目は人間そっくりだが肌のいたるところにウロコのような亀裂が入る。眼光鋭く周囲を警戒する。
ハーフドラゴンの男は手を挙げた。部隊が止まり、各が武器を用意する
… … … ……ほいん………………ほいん
かすかに森の中では聞こえてこないようなまりの弾むような音が聞こえてくる。
… …………ばいん………ばいん
次第にその音は近づいてくる。
ぼいん
…
しかし音の主は一向に現れる事は無い。フードから生唾を飲み込む音が聞こえる。
「!!上だ!!!」
森の木々のせいであたりがかけて暗くなったことに気づくのが一瞬遅れた。叫んだのは感覚の鋭いコポルクの男。
数秒後には、無数のスライムが部隊に降り注いだ。
「なんだスライム?」
「フードを捨て去れ!地面から離れろ!」
いつの間にやら、私の隣から消えていたハーフドラゴンの隊長は木の上からこちらに向かって叫ぶ。彼はすでにフードを脱いでいた。
すぐさまに反応できたものはよかった。
反応できなかったものは…
ぬるぐちゃねちょむちょぬるぐちゃねちょむちょ
ぬるぐちゃねちょむちょぬるぐちゃねちょむちょ
ぬるぐちゃねちょむちょぬるぐちゃねちょむちょ
ぬるぐちゃねちょむちょぬるぐちゃねちょむちょ
全身を高速でスライムが走り回る。粘液を守り合うような濃厚な音を立てながら。
「んひぃぃ!」
「だめー!」
「その穴は違う穴ー!」
全身と言う全身穴と言う穴を撫でられはいずり回られ、脱力し倒れていった。
「なんつう恐ろしい。隊長ありがとうございます」
「油断するな、スライムを巻いた張本人が近くに潜んでいる」
隊長は腰に装備したナイフを逆手に持つ。左手には魔法の盾を展開していた。ナイフに黒い魔力が流れ込む。その様子を見て他の者たちも、緊張する。
地面ではスライムたちが1カ所に集まり小屋ほどの大きさになっていた。どこを向いているかわからないその水色の塊はプルプルと震えていた。
「…たかがスライムが。所詮水に魔力が通ったもの。俺の炎で蒸発させてやる」
「おいまて!」
サラマンダーが木から木へと飛び移り、スライムの上空を取る。
「もらった!!クリムゾンフレイ…ゴボコボコボーボボボボ」
あっという間にスライムから伸びた触手に絡め取られ体内に取り込まれる。しばらくもがいていたが、次第に動きが小さくなっていき、スライムの体内で力なく浮遊することとなった。
ふよん。
低級の魔物だと侮っていた者達は冷や汗をかく。
なんだこれはほんとに現実か。
「はーはっは!」
森の中に響き渡るのは若い女の声。
精鋭たちが見守る中、現れたのは赤髪に金縁のゴーグルをつけた小柄な娘。金の腕輪を左腕に、右手には銀の指輪を五指につけ、木の上の男たちに向かって不敵に笑う。
「兵士さん達、びびって木上に登ってる〜ははっ」
「この女!引き裂いて蟲どもの餌にしてやる」
1人のゴブリンが鉄の槍に風の魔力を纏わせ、鬼から飛び降りながら女に叩き込む。女はそんなゴブリンに対してスライムを投げつける、が槍に触れる前に粉々になった。
「無駄だぁひん剥いてやるぜぃ」
「かまいたちか。これは五連でもテッポウウオじゃ倒せないなぁ」
その若い女は妙なことをした。スライムに自分の右手を突っ込んだ。彼女の指輪が輝きだす。
「死ね!」
「五連穿つ人(テッポウウオ)×群れ(レギオン)『スライムマシンガン』」
巨大なスライムから撃ち出される数多くの魂によって、ゴブリンの体が再び宙に舞った。
ゴブリンが地面に落ちる頃には全身が粘液まみれでぬめりテカリ気を失っていた。
その激しい銃弾の嵐は木々を貫き、初撃を交わした精鋭たちを何人も貫いていた。
「ふっ!気づいたときにゃあ、あんたたちはとっくにぬるねちょだ!!」
赤髪の女はスライムによって周囲がヌメヌメになってしまった森の中で決めポーズをとりながら叫ぶ。
「はーはっは!」
そして生き残った最後の1人に向かって、指を指して話しかける。
「ようこそ、楽しい楽しいぬちょライフへ。すぐにあなたも仲間とともに快楽に落としてあ・げ・る!」
ウインクを投げつけたが、ハーフドラゴンの男はそんな彼女を静かに見据えながら戦闘態勢を取る。
「…あんた、魔王みたいだな」
「魔王失礼な!私の名前は弥山紅葉。ただのしがない美少女さ」
異世界転生者である貧相貧乏貧乳少女の新たな冒険が幕を開ける。って誰が三貧娘じゃい!
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