間話 シカタロウ

その男は突然現れた。


3大魔王と名乗っている若い魔物たちが名のある実力者や神神に戦いを挑む混沌の時代。


魔力も力も弱い人間たちは奴隷や食料として扱われていた。


現れた男の名前はシカタロウ。シカタロウ=ミセン。中年のその男は豪快に高らかに不遜に愉快に笑う。


「がっはっはっは」


笑う人間だと。そんな人間見たことがない。人間誰だろう。うじうじと下を向いてへらへらと愛想笑い。ゴミムシ以下の存在。気でも触れたか。


「がっはっはっは」


金の腕輪とそれぞれ色の違う銀の指輪をはめて、暴風のごとく激しく、洪水のようにあっという間に魔王の拠点をつぶしていった。


その噂は次第に大きくなっていき、各地で人間の反乱が起こるようになった。


シカタロウは指輪に魔物を宿していた。


1つ目の指輪には最弱の魔物スライムを。「鹿太郎の仲間が弱いのはいやだ」女神の加護で最上位になったゴッドスライム。分裂し、身代わりになり、伝達し、盾となり、シカタロウの想像力をフルに活かす。「お前は最弱じゃない。最高の相棒だ。俺たち人間と世界をひっくり返そうぜ」「ふよん(我ら一族ミセンとともに」


「言葉をしゃべれぬとは面倒じゃの。そうだ意思疎通できるようにしよう。ついでにスライム同士情報を共有できるようにしよう」シカタロウは優秀な後方支援を手に入れた


2つ目の指輪には奴隷落ちしたオークを。汚らわしい愚鈍と罵られていたオークの若き棟梁と盟友となる。「これで俺とお前はダチだ。オークは愚鈍?ちげうな。1つのことを貫き通せる力があるのは愚鈍とは言わない。実直だ」「あぁ」


「よし、オークは特例じゃ指輪の人数制限を解除しよう」シカタロウは一軍を率いた。


3つ目の指輪には発育不良のドラゴンを。体も小さく色も黒い仲間の龍から馬鹿にされ続けたドラゴンを。「お前の黒は全てを飲み込む色だ。とても美しい。体が小さいからなんだ?小さいのはそいつらの器だ。自由に空を飛べ。世界は広い」「わたしは、わたしは、誇り高き竜だ!」


「ドラゴンとはかっこいいな。時を進めよう。ドラゴンは歳を得るほど強くなるからな」その気になれば1つの国を簡単に滅ぼせる力を得た。


4つ目の指輪には優しい心の死神を。人を殺せぬ死神を。「別にいいんじゃないか。お前はお前で。命を取れないのなら、死ぬだけだ。だったら、死ぬまで精一杯生きてもいいんじゃないか」「…ふぇぇん」


「シカタロウに惚れておるな。この女。なんか胸がモヤモヤする。胸焼け?ん?あれ?」死神のルールを振り解いた。


5つ目の指輪は…まだ秘密


シカタロウとなかまたちの冒険は続く。どこまでもどこまでも続いていく。









「ってどうだ?ぎゃはははは」


「大分ていうかかなり美化されてないかこの話。ガハハハ」


「お前の童話に比べたら幾分かマシだろぎゃはははは」


「…もうすぐ日の出だ。」


「夜行性の多い魔王軍には賢明な判断だ。闇討ちが通用しないからな。言うならば朝討ちってやつか」


「どうだ俺の物語は、この世界は至極愉快痛快だったろう」


「あぁ…ありがとう。」


「泣くなよ泣き虫神様。泣き虫かみぃちゃんで童話をつくるぞ」


「黙ってろ。ふふっ。でも、ほんとにいいのか。これだけ様々な種族の生活を向上させて、祭り上げられて王様にでもなればいいのに」


「がはははは。貧乏童話作家のこの俺が王様?器じゃない。それに…。まだ時じゃない。」


「…」


「魔王軍が強すぎる。この破竹の勢いに加えて、仲間の士気が高すぎる。このままでは犬死にする奴が多く出てしまう。今はまだその時ではない。」


「俺たちの戦いはこれからだってやつか」


「がははははちげーよ。お前たちの物語はこれからだ。なぁ、紅葉?」

 



「ガハハハハハ俺の名前は鹿太郎!弥山鹿太郎!三大魔王、話がある!」




その後シカタロウの降り立った森が中立地帯として認められた。



シカタロウの亡骸とともに

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