ぬるぐちゃべちょ ぬちょぐちゃ 神様の提案

突然に現れたのは流れるような金髪に美しい顔立ちの美少女。白いワンピースを着て頭には金色に輝く輪っかが浮いている。しかし口調は非常に乱暴で吐き捨てるように言うのだった。


「まったくうちの部下どもは使えない」


「…」

「…」



彼女の両手には2人の男性がぶら下がっていた。両者とも背中から羽が生え、頭の上に輪っかがあった。2人とも血だらけで、腕や足の骨が折れていた。そんな2人を地面に投げるのだった。


桜は自分の恩人たちを傷つけた張本人に対して怒りをあらわにする。


「…なんで私の恩人たちを…」


「あ?あぁ!あの山奥の田舎者どものこと?お前ともみじを戦わせるためだよ。黒き勇者様。」


「そんなことに何の意味があるの」


「うーんとね、暇つぶし?」


「…っ」


そんな神様に対して、さくらは怒鳴ろうとしたが、それよりも先に動くものがいた。


「殴る人〈カンガルー〉ぅらあああ」


もみじの攻撃をひらりとかわす。そして怪訝な顔を向ける。


「なんでお前が怒るんだよ。ぎゃはは。愉快なやつだな。関係ないだろ。それにそいつはお前を殺しかけたんだぞ。助けてやる義理は無いだろう」


神様に殴りかかった紅葉のことを桜を見ていた。


「うるさい人でなし!この子にとっては異世界に生きた心の支えだったんだ!」


「うん、まぁ、そうだな。人ではないな」


「っ!穿つ人〈テッポウウオ〉四連!!」


直列につなげたスライムを思いっきり殴る。実際4連で打った事は今までなかった。スライム2匹分で、木に大きな穴を開けることができたからだ。


想像した通り、目にもとまらぬ速さで先頭のスライムが飛んでいく。もみじ自身は反動で大きく後ろに吹っ飛んだ。

地面を滑り転げた後に神様の方を見るが、全くの無傷だった。


「単調な攻撃をしても無駄さぁ。私は全知全能の神様なんだから」


「跳ねる人〈ホッパー〉」


神様の足元にスライムを召喚する。

「これで私を空中に浮かせてどうするつもりだ。私には羽根が生えてるんだよ。よっと」

空中に見えない壁があるかのようだった。浮き上がった体を水平にし思いっきり見えない壁を蹴ることで神様は紅葉の後ろにまわりこんだ。


「お前の戦いはずっと見させてもらったんだ。種も戦略も全てお見通しなんだよ」


もみじの背後から聞こえた声と脇腹に鋭く走る痛みに一瞬気が遠くなった。唇を噛み痛さで意識を保とうとする。そんなもみじの体に掌底をかます。


「がはっ!」


「ストップストップストップ。私は話をしに来たんだ」


地面を転がり痛みに悶えるもみじを足で踏み、神様は言った。


「私とお前らで魔王討伐しに行くぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る