ぬるぐちゃぬるむちゃ ぬるふよ 第15話ドラゴン対スライム
ドラゴン対スライム
黒い龍は彼女の命じるままに翼を羽ばたかせた。先ほど以上の風が集落を襲う。
木造の家は激しい風にあおられて、今にも吹き飛んでしまいそうだった。
「5連スライム銃テッポウウオ」
分裂した小さなスライム同士をなぐり、ぶつけ合うことで、木に穴を開ける位の威力はある銃となる。スライムの数を増やしたり、大きさを変えることで威力や飛距離を変えることができる。湖での実験で木に穴を開けたのはこの技である。
3連がゴム弾程度、5連で木に穴をあけることができる
ぺにょん。
全く効かなかった。
竜の鱗の強度をなめていた。その後も様々な箇所を撃ったり、重ねるスライムの数を増やしてみたりしたが、全く傷は付かなかった。打てば打つほど自分のスライムの量がみるみるうちに減っていったのだ。打ち続けてもらちがあかない、
「跳ねる人〈ホッパー〉」
彼女の狙いが私である以上、集落の真ん中に居続けるのはよくない。上空に躍り出る。
「弥山もみじ」
思った通り狙いを変え、なかった。目では追ったものの龍に命じる。
「黒息〈ブラックブレス〉」
彼女がそう言うと龍は息を思いっきり吸い込み、一気に吐き出す。吐き出された吐息は黒く染まり、集落の家々を破壊する。
「おっちゃーん!!」
たいして仲がいいと思わないが、見知った人間がやられるのは気に食わない。
「なんてひどいこと」
「ひどいことをしたのはお前じゃないか、弥山紅葉」
「は?」
「数時間前、お前が消し飛ばした山には私が世話になった人たちがいた。忘れたとは言わせない。言わせない!!」
激しい感情に駆り立てられながら、彼女は叫んだ。
彼女は指輪をしているほうの手をこちらに向ける。
そして拳を握り、龍の頭に押し付ける。
「暗黒息〈ブラックブラックブレス〉」
何かやばいのが来る。
「全身防御〈アルマジロ!〉」
「防いじゃだめです!逃げてください!!」
腕輪からの突然の声に驚く。しかしスライム君はその声に反応して私を脇へと弾いた。
私は自然落下していった。先ほどまで私がいたところを黒色が塗りつぶす。
「スライムくん!!!」
黒い光の光線が過ぎ去った後には何も残っていなかった。
「だぁりゃあああ」
空から落ちてくる私をカシラが受け止める。勢いを殺すためにその場を転がり、物陰に隠れる。
「おいお前、大丈夫か」
おっさんは頭から血を流していた。
「スライムくんが…スライムくんが…」
「あぁ…」
ふよん。
「これは」
手のひらサイズのスライムがそこにいた。
「俺の体を散々はいずり回ってくれたスライムだよ。くそ、なんでこんなところにドラゴンが。あんたどうにかできないのか」
「私だって、わけわからないよ。スライムくんがこんなに小さくなってしまったら、できることも少ないし」
湖で補給した水は今までの戦いで消費してしまった。生成できるのはこの小さなスライムくんを飛ばす程度。おそらく私が飛ぶだけの大きさは無い。
黒龍は上空を旋回し、いたる方向に攻撃を放っていた。
「すみませんもみじさん」
山本さんの声が腕輪から聞こえてきた。
「なんだ突然!どこから声がしたんだ。今の誰だ」
腕を抑えて物陰に隠れる。
「し、山本さんどういうこと」
「神様が山を消し飛ばして、そのことをもみじさんのせいにしたんです」
「は?なんで」
「もみじさんと桜さんを戦わせるためです。つい先ほど、あー、天使の海崎が白状しました。」
「本来私たちはそちらに過度に干渉しないのが決まりなんですけれども。決まりを作った本人が破られているので、とめる者がおらず。」
あのくそ神!
「じゃぁそれをあの子に説明してよ。」
おそらく聞く耳を持ってもらえません。
まぁ確かに。
「じゃぁ助けてくれない。だってそれはそっちの責任なんでしょ。私を強くしたりとか山本さんがドラゴン倒してくれるとかできないの」
「…あまり力を貸しすぎるとアウトになる可能性があるのでヒントだけあげます」
「アウト?」
私の問いかけを無視して山本は続ける。
「龍は生き物です」
「はぁ?」
「もみじさん、死なないでください。私はまだあなたの冒険を見守りたいのですから」
それっきり腕輪は何も言わなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます