にゅぷぬちょにゅ にゅぷぷにゃるねぷちゅ→第5話あらたなる力

第五話 新たな力


「ひゃっほぉー!」


森の中を歓声が響き渡る。


バインッ!


バインッ!


バインッ!


リズムよくつながる音は心地良い。


「あなたの発想力には驚かされましたよ」


山本が半ば呆れ、半ば感心しながらそういった。


「へへへへ」



指輪には召喚と言う力があった。考えを巡らせている最中に、契約したモンスターをいつまでも連れて歩くわけにはいかないだろうと推測した。スライムぐらいならかわいいが、ドラゴンなんて契約して街に連れて行ったら、パニックになる。そうしたことを考えて山本に聞いたところ、指輪の力によって、召喚と回収ができることがわかった。


「召喚!(サモン)」


地面の上だろうが空中だろうが、自分がイメージした場所にモンスターが召喚される。しかもその時一瞬だけその場に固定されることがわかった。空中に召喚したらたとえ空をとべなくてもその場で一瞬だけとどまることができる。


「帰還!(ホーム)」


そして回収方法も簡単だ。帰還と唱えることで、離れた場所にいるモンスターを回収することができるのだ。


「だいぶコツを掴んできたぞ!」


まず足元に召喚してスライムを固定する。その上で私がジャンプする。スライムを回収する。足元に召喚してジャンプする。そしてスライムを回収する。これらを繰り返すことによって、



召喚(サモン)! ジャンプして! 帰還(ホーム)!



召喚(サモン)! ジャンプして! 帰還(ホーム)!



召喚(サモン)! ジャンプして! 帰還(ホーム)!


後は練習を重ねることによって高速で移動することができることになった。


「たーのしー!!」


バイン!


バイン!


バイン!


バイン!



私はこの力を跳び人(ホッパー)と名付けることにした。どこかの冒険者が落としていっただろうゴーグルをつけ、森の中の探索を続けた。


「喉が渇いたなぁ」


意外に体力を使ってしまった。それは当然そうだろう何回も跳び続けているわけだから。着ぐるみのバイトやヒーローショーでバイトをしてるので身のこなしや体力には自信がある。そんな私でもだいぶ息が上がってしまった。ほどよく開けた場所に狙いを定める。


「召喚!」


スライムの中に飛び込む。にょっぷん。


衝撃を吸収するかのようにスライムは柔らかく受け止めてくれた。


「ありがと!」


とぷぷん!


森の中を駆け巡っていてだいぶ周りの様子もわかってきた。かなり広い森の中にいるようで、広葉樹が多く見られるようだった。季節は日本で言うところの春…かな。新芽が芽吹いているのがよく見られたからだ。生き物もいくつか見つけた。ただこちらは全くわからなかった。兎に角が生えていたようなものや猪に近い毛むくじゃらな生き物に追いかけられたりした。まだまだ調べることがいっぱいありそうだ。


植物公園でバイトをしていた時に、水を蓄える植物があることを教えてもらったことがある。いくつかの植物を切ってみて、水が出てくる植物を見つけた。この植物はいろいろな木に寄生しているようで、時々見かけていたのだ。枝の中が空洞になっており、森の中での貴重な水分となる。あたりを探しているとやはり見つけることができた。つるを引っ張りかみちぎる、中からとくとくとくと水がにじみ出てきた。それを口に含む。植物の香りが少しだけしたが、喉が乾いてる私は気にならない。コロコロと足元スライムが転がる。


「スライムくん、水が欲しいかい」


ふよっふよっふよっ


口がどこなのかわからなかったので


「えいっ」


てっぺんにぶっ刺した。


プルルンと震えたのち、スライムはゴクゴクとその水を飲み尽くしてしまった。また一回り大きくなった。


「だいぶでかくなってきたなぁ」


腕輪から山本が答える


「スライムはいくらでも大きくなります。大きくなれば2つに分かれることもできます」


「つまり増えるってこと?」


だんだんと楽しくなってきた。このスライムをたくさん集めて、はねたらトランポリンよりもはるかに楽しいアトラクションになりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る