ぬちゃねちょ ぬっちょのねちょちょ→ 第二話 3つの特典
第二話 3つの特典
「まず腕輪はこちらの世界の言語の自動翻訳機能がついてます。話したい相手との意思疎通ができます。翻訳だけなので、文字の練習は自分でしてくださーい。後は私、山本とおしゃべりができます。」
そうか、世界が違うのなら言語も違うはずだ。こちらの世界と言う言い方では、日本では無いのだろう。もう未練も何もないけど。頼りになるじゃないか。
「指輪の方は、モンスターと契約ができます。ただし、魔石がないと使えません。他の転生者に使ってしまったので、一個しかありませんでした。自分で探してね!はははっ」
少しいらついた。
「最後は、スライムですね。神様特製の経験値が詰まった特別なスライムです。レベルも1攻撃力も1防御力も1だからあっという間に倒せますよ。まぁ村娘が、一人で序盤のダンジョン攻略できる位には成長できます」
「スライム?」
「ちょうどあなたのお尻の下敷きになっています」
あわててその場に立ち上がる。黒っぽく湿った土から水がじんわりとにじみ出して、それが集まっていく。ゆっくりとゆっくりと大きくなって数秒降った後にはプリン位の大きさの水の塊があった。
ふよんふよん
「めっちゃ美味しそう」
「スライムを見てそんな感想を抱いた人はあなたが初めてですよ」
いやだってね。プリンって食えないじゃん。高いじゃん。棚卸しをしてる中でいつか食べてみたいなーと思ってたんだよ。
「そうそれがスライム!モンスターにおいて、最弱最低最底辺の弱さ。生まれたての赤ん坊ですら握り潰せる存在。原始的な生き物ですねっておいっ」
ぱくっ
「ん?」
「早く吐きだすんだもみじちゃん!スライムは弱いって言ったってモンスターなんだから!」
もにゅりもにゅるとした食感が口の中に広がる。ぬるぬるしてるのかと思えば案外さっぱりしていて、強いて言えば、ポン酢が欲しかった。
「大丈夫大丈・・・ごぼっ!ゴボボボボ!」
「いわんこっちゃない!」
息ができない。必死になって手で水をかき出す。ただ指がすり抜け、かきだせたのは少量だった。
お、溺れる。
唐突に肺の中に空気が流れるの感じた。スライムが口の中からはい出てきたのだ。
「ぜぇ・・・はぁ・・・強いじゃん!!」
「もみじさんがあほすぎなんですよ。長くナビゲータしてますけど、スライムにいきなりやられてしまいそうになった転生者は初めてですよ」
山本は呆れた声でそう言った。笑?みんな食べないの。口の下中から出て行ったスライムは、先ほど私が多分かじった場所へ戻っていく。ただ少し違和感を感じたのだ。
「ん?なんか大きくなってない?」
ふよん ぶよん
「口の中の水分を吸って吸収したのでしょう」
先ほどはプリン位の大きさだったのが今度は、小ぶりなメロンくらいの大きさになっていた。
ふよん ふよん
じっと見つめている。
「そのスライムは天空からの着地のために用意されたクッション材。落ちた人間を地上で、受け止めたら、後は経験値として取り込まれることで一生を終える存在なのです」
こいつも私と一緒で使い捨てられてしゃぶりつくされて殺されてしまうのか。そう思うと愛着とは言わないけれどもとても親近感が湧いた。
「よし決めたこいつと契約する」
「・・・は?」
山本の素で驚いた声が聞こえた。
「ごほん、ちょっと、正気ですか?紅葉さん。これから先すぐに強力なモンスターに会います。そんな弱いスライムと契約なんかしていたら、せっかくもらった命も数日でなくすことになりますよ。」
「その指輪は親密度が上がるか相手を倒せば使役できるアイテムでかなり貴重なものです。たとえあのドラゴンでさえ契約できるのです。勿体なさすぎる」
「さっさとスライムを殺して、レベルアップすべきです。ここはあなたのいた平和な国ではないんですよ。あなたはレベル1の村人。つまりモンスターたちにも劣るこの世界で弱い存在なんですよ。」
山本は親切に言ってくれてるのかもしれないが、私には山本の言葉は響かない。親父の件や働いて感じた大きな流れに翻弄される小さな自分とスライムを重ね合わせてしまったのだ。哀れみや同情なんかではなくて、ここでスライムと言う存在を切り捨てて踏み台にして、前に進むのは私の嫌った世界の仕組みそのものだった。
「最弱?上等さ!私も日本では底辺だった。毎日死んだように生きて、生きるために死んでいた。いちど死んだ人生だ。クソみたいなぬるぬるローションまみれで終わってしまった私の人生はあそこで終わったんだ。」
もう一度生まれ変わるなら
もう一度生まれ変われるなら
私は自分に正直に生きようと思った
「いいかよく聞け。私はこのスライムと私で世界をひっくり返してやる。この世界で1番強いやつは私とこいつで地の底に落としてやる。そこで聞いてるんだろう?か・み・さ・ま?退屈はさせないよ」
「変われ!山本!!ぎゃははははは!いいぜ、認めてやるよ。特例だ。」
「最弱のスライム使いが神に挑むっていうのは面白いじゃねーか。もしお前が私にたどり着いたのならお前の願いを1つ叶えてやる」
「首を洗って待っておきな神様。スライムでぬっちょぬちょのねっちょねちょにしてやるからね」
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