第45話:強制共同生活♂♂♀
「ここがアユムの家デスネ」
「すまねぇ、ここは瀬戸際対策の会のビルなんだ。あくまでここの一フロアだけが俺の部屋なのよ」
“ドキッ! 監視員と一緒に共同生活☆”の話を受けてビルに戻った俺達はさっさと三階に向かう。
「アユム、ビルにパルチザンと書かれていたのだが」
「前の会社がおかしな名前をつけただけで、テロ組織とかじゃないんで気にしないでください」
パルチザンってレジスタンス軍みたいなもんだっけ。
そんな名前がつけられたビルを本拠地にしてる政府の秘密部隊ってなんだろうね、ほんと。
まぁ前の社長が悪いんだけどさ。
「ところでアユム、どうしてワタシのこと、エリーって呼ばないデスカ?」
「そういえば私の事もハワードと呼ぶな。分かりづらくないか?」
「そりゃあ名前や愛称で呼ぶのってもっと親しくなってからでしょうし」
陽の呼吸を究めてたり顔が良ければ気さくに名前とかあだ名で呼べるけど、陰の中で生きてきた自分にとっては中々にハードルが高い。
「ラストネームだと区別が付かなかったり、不便じゃないデスカ?」
あー…人種の坩堝になってる国だと名前で呼ばないと被ってる人が多くて間違われるのか。
だから海外って名前呼びが当たり前なんだな。
「それじゃあエレノアと、イーサンさん……?」
「プフッ…!」
エレノアが"イーサンさん"の所で噴出してしまった。
まぁイーサンサンって聞こえると違和感凄いからね。
「いいんじゃないでショウカ、イーサンサンで。かわいいデスヨ」
「……イーサンでいい」
年上の人を呼び捨てにするのはちょっと気が咎めるけれど、年下の女の子と寝食を共にするのに比べればどうってことない。
いやマジで捕まるかどうかって話だからね!
「それで、アユム。これからの予定について聞きたいのだが」
「ないです」
「……無い?」
イーサンが眉をひそめて聞き返してくるのだが、こちらも同じ事しか返せない。
「ないです!」
「エット…駆除としてのお仕事はないケド、被害に遭った人達の所にいくとかデスカ?」
「そんな予定もないです!」
ウチはボランティア団体って看板出してるけど、マジで看板出してるだけだからね!
適当に仕事して、たまに変な駆除依頼が偉い人からくるからそれをこなしたり、あと動画配信でグロになりそうな人がいたら助けに行ったり……。
前より生活は楽になったけど苦しくなったのは何故だろうか。
温暖化だな、地球温暖化のせいにしておこう。
皆もっと地球に優しくなれよ!
まぁ地球からすれば「一番環境ぶっ壊してるお前らが言うな」って思ってるだろうけど。
「あぁ、予定といえば今週末に富山に行くんですよ」
「史上最悪の生物災害が起きた地と呼ばれている場所だな」
「……俺の地元、そんな風に言われてるんですか?」
「Tier-4のモンスターが二匹も上陸したんだ。本来なら爆撃が必要な事態だぞ」
流石はアメリカだ、初手で爆撃って手段が出てくるとか凄く頼もしい。
「ただ一つ問題があるんですよ。雅典女学園の付き添いって形になってるんで、二人は同行できないかもしれないんですよねぇ」
あー残念だなぁー!
本当はザイオン救済団体の人達にも現場を見てもらいたかったのになぁー!
だけど俺って付き添いだから、勝手に部外者を連れてったら怒られるだろうしなぁー!
いやぁーほんとタイミングが悪かったなぁー!
『ええ、ザイオン救済団体の方々ですよね。問題ありませんよ』
「理事長! どうしてそんなこと言うんですか!?」
一応、念の為というか断られる為に北小路理事長に電話してみたのだが、あっさりと了承されてしまった。
『そもそも、荒野さんと同行されてる方の事情についてはわたくしも把握しております。その上で引率をお願いしたわけですからね』
「報・連・相があってもいいと思うんですけど!?」
「アユム、軍隊においてNeed To Knowは原則だ」
「俺は軍人じゃない!!」
イーサンと違って俺は秘密部隊に所属してるただの一般人だよ!
……秘密部隊に所属してる一般人って何なんだろう。
人を殺さない暗殺者とか、そういう立ち位置だったらカッコイイのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます