Drama21: 語り愛:ー誰かのおばあちゃんーより
#*生活保護のケース3. 誰かのおばあちゃんの話
#弘樹は、こんな話を痛感したこともある。
多くの男の子を生んだ、あるおばあちゃんが、老後に生活保護で生きてきて、そのおばあちゃんの長男が、おばあちゃんの生活保護の支援者となり、おばあちゃんに月に数万円の支援をしていたが、よく、支援のお金を持ってくるのに遅れたり、間違えたりしていたので、その度に、おばあちゃんは、死にそうな思いをしていたらしい。
ある日孫が、おばあちゃんが、ずっと一人なのを危惧して中学生になって少しのお金の融通がつくようになった男の子の孫が、おばあちゃんを訪ねてきた。
おばあちゃんは、そんな孫に、いいものを食べさせてあげようと、また、自分も普段いいものを生活保護の暮らしの中で食べてなかったので、「少しのいいものを、一緒に食べようね」と、天丼のセットを出前で頼んで、おばあちゃんは、多くのことに涙ぐみながら、孫と一緒に天丼を食べた。
おばあちゃんは、孫に、お父さんは、いつもお金の支援してくれるけど、たまに、忘れて遅れて、おばあちゃんは、その度に死にそうな思いをするねん。困ったら、少しは、近所の人が着物を持って行ったらお金を貸してくれるけど、もう、そんなんも、耐えられへんねん」
と、おばあちゃんは言って、きつめにハンカチを目に抑えて泣いた。
「お金の支援が遅れて、耐えられずに、お父さんの会社に電話したら、こっぴどく怒られて、もう、泣くより、死にたいけど、食べられずに餓死して死ぬのが怖いねん…。もうどうしたらいいのか、怖いし、わからへんねん。僕のおとうさんも、何もあんなに怒らんでもいいのにって…。
それで、私が生んだほかの子に電話しても、長男が支援してるやろって、全然、助けてくれへんねん!そう思ったら、いっそ、包丁で喉をついた方が楽やと思うこともあるけど、それが、できへんねん!僕のお父さんが悪いわけではないねん。これが、生活保護やねん!生活保護が悪いねん!」
と、おばあちゃんは、嗚咽して、孫の前で、ハンカチを目にきつく抑えて泣いた。
激しく泣き崩れるおばあちゃんを前に、中学生の孫には、生活保護がよく理解できなかった。
生活保護とは、いったい何なのだろうかと、中学生の男の子は疑問に思うしかなかった?
「生活保護って、最低限の生活を享受してくれるんやろ?なんでお金ないのん?」
と、男の子の孫は、疑問に思ったことをおばあちゃんに、聞いてみた。
「そんなことない!生活保護は、初めから、生活できんようになってるねん!お金の支援者が、おらんかったら、生活保護が受けられずに、死ななあかんねん。支援者が、お金を持ってこなかったり、支援者の機嫌を損ねて、お金を持ってきてくれなくなったら、もう終わりやねん!ぼくのおとうさんも、少し足りなくなっても、その分の支援をしてくれへんし、やりくりするのが、苦しくて苦しくて!少しは、缶詰とか多めに買っておいてるけど、そしたら、僕のお父さんは、どんどん、お金を持ってくるの遅くなるばかりやし!もう、どうしたらええか、わからへんねん!!
もう、死ぬしかないねん!おばあちゃんは、自分で死なれへんから、食べ物がなくなって苦しんで死ぬしかないねん!私が産んだほかの兄弟も電話しても、知らん顔やし!おばあちゃん、もう、恥ずかしいわ!人の命を、何やと思ってんねん!私が産んだ子たちは、仕事が忙しいって、誰も会いに来てくれへんし!少しのお金も貸してくれへんし!親の命を何と思ってんねん!もう、泣くしかないわ!」
と、おばあちゃんは、孫の男の子の前で、激しく泣き崩れた。
生活保護の実態が、よく理解できず、おばあちゃんの男の子の孫は、このことは忘れた方がいいと思い、誰にも言わずに、心にしまっていた。
何か月か経って、
「お金がない」「食べるものがない」「もうあかん!」「私が産んだほかの兄弟も、お金の話になると、怒り出すばかりやし!」
と、何度かおばあちゃんから孫に電話がかかってきた。
「僕のおとうさんに、早く、生活保護の支援のお金持ってきて言うて!おばあちゃんもう死んでしまうわ!」
と、おばあちゃんは、男の子の孫に激しく言った。
中学生の男の子の孫は、おばあちゃんから電話がかかってきたことを言うと、おばあちゃんが、怒られてしまうし…。
それとなく、
「おばあちゃんに、生活のお金払ってる?早く持って行くようにした方がいいで…」
と父親に、何度か言ったが、
「父親は、今月、払ってへんかったかな?もう少ししたら、お金持って行くって、もし、電話かかってきたら、おばあちゃんに言うといて」
という、答えが、父親からは、返ってくるばかりだった。
しばらくして、中学生の孫が、電話に出ると、
「ぼく、お父さんに、お金持ってきて言うてくれた?もう、おばあちゃん、ずっと、何も食べてへんねん…。多分もう、おばあちゃん死ぬわ…」
と、力なく、おばあちゃんが、話した。
「ほかの親戚とか、あたったら?」
と、中学生の孫が言うと、
「もう、ええわ。皆怖いくらい怒るばかりか、知らん顔やし…」
と、おばあちゃんは、力なく口ずさむように中学生の孫に言った。
「もう、おばあちゃんも終わりやわ…。私が産んだ兄弟の皆に言うといて…。生活保護になったら死ぬしかないか、子供や友達、近所の人にも、お金を借りに行って惨めな思いするだけやから、自分らのためにも、生活保護の人がおったら、生活保護の人を助けたり、皆で少しづつでもお金を支援してあげたり、たまには、多くお金を渡したりして、少しのいいモノ食べれるようにしてあげたり助け合わなあかんで…。
じゃあね、僕だけやわ。最後までおばあちゃんを心配してくれて、怒らんかったんわ。いつか、ぼくが、老いて生活保護になったら、生活保護がましになって、福祉が行き届いて、たまには、少しの贅沢をできる生活保護の老後の社会になるといいね…。
生活保護が変わらなかったら、ぼくが、偉くなって、早く生活保護をかえてな…。
みんな気づいてないねん…。生活保護が滅茶苦茶や言うの…。はじめっから、支援者がお金くれな、生活できへん額しか保護費をくれへんし…。
誰も生活保護を変えへんかったら、ぼくが、今のおばあちゃんの言葉を思い出して、」生活保護をかえてな…
みんなのために………
ぼく、ありがとう…。いつまでも、優しい僕でいてな…。
じゃあね…」
といって、力ない声の電話の声が途絶えた。
中学生の男の子の孫は、何度も、激しく電話ごしに、おばあちゃんの名前を叫んだが、おばあちゃんの応答はなかった…。
男の子の孫は、立ち尽くすしかなかった。
Drama in a heart 山崎風樹 @blueskymoon10
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