ひとり海外渡航

高校を卒業して、2ヶ月後。

わたしはひとりでハワイにいた。


日本から直通便で、8時間ほど。


理由は息苦しい日本から、

脱出するためである。

うそである。


いちおうは語学留学という目的があって、

渡航したのだ。純粋に英語が喋れるようになりたかった。


英語が喋れれば、世界中

どこへ旅しても困らなそうだ。


英語が喋れれば、

好きな音楽も映画も字幕がいらない。


英語がしゃべれれば、

外国人とも仲良くなって

人間関係も世界も広がる。


だから、英語が喋れるようになりたい。

そんなことを建前にして

わたしはハワイに来ていた。



ハワイはいいところだと思う。

人も時間もゆったり流れている。


海に囲まれて、山が見えて、だからこそ

雨がよくふるけど、雨が上がると

二十にかさなった虹が見えるのだ。

わたしはこれを、何度も見た。 

綺麗。



自然豊かな場所で、天気が良くて

みんながどこか陽気なあの島で、

私は一年を過ごした。


今後のことなど何も考えずに

過ごしてしまった。

これが、失敗。わたしの人生においての

何度目かの失敗であるが


当時18歳。


18歳なんて、形が大人の子供だ。

人それぞれ進むスピードが違うから

もちろん18歳でも成熟した子はいるが、

わたしは見た目だけ大きくなったにすぎない子供だった。




学校には、バスをよく使っていた。

実際ワイキキから歩いてもいけるのだが、

バスの方が早いから、めんどくさい日はバスで行く。


バス停で待っていると、道路の向こう側にいた通りすがりのおばあちゃんに

「nice shoes!」と声をかけられたり、


友達と出掛けた際に、スマホをなくしたことがあった。その時に、見知らぬ人が車でショッピング街まで送り届けてくれたり、



冷房が効きすぎたバス内で寒いと思っていたら、横にいたたまたま乗り合わせただけの乗客が真っ赤なジャンパーをくれたりした。


親切にされた思い出が多い。

異国から訪れる人が多いので

みんな外国人には慣れている。


こわいことや、危険なことに巻き込まれたりしたことは1年いたが特になかった。


むしろ、バレンタインデーの日、

花屋に男性が並んでいるのを見てほっこりしたり

カフェで勉強してるとおまけをしてもらったり

サウナで顔をあわせた子と仲良くなったりした。


海にも潜ったし山にも登ったし

空から落ちたりもした。

異国の文化やハロウィンや感謝祭

暖かいクリスマスも経験して


色んな国の人と話し、交流した。

平穏無事。無計画どおり。


そもそも、日本人が多い。

店員さんが日本人のお店も多くて、

丸亀製麺やドンキホーテ、

日本食のお弁当屋さんも居酒屋もあるような場所だ。



だから、のびのびと、何も考えず

に過ごしてしまったのだ。



でも、あの楽しき自由な日々は

わたしのなかでは宝のように大切。



そして、楽しい日々を頭を空にして

過ごし


一年後、


10キロ太って日本に帰国したのである。

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