哀れみのぶどう酒

同じような毎日を送るのがきらいだ。

飽きる。


何かを変える必要がある。

今日は、新しく飾る花を買いに行こう。

部屋に飾る絵を変えてみよう。


部屋のランプの明かりをオレンジにしてみよう。アロマキャンドルを今まで買ったことのない香りのものを選んでみよう。


シンプルな服装が好きだ、そこは変えないけど、柄物のスカーフでも巻いてみよう。


ゴールドのアクセサリーが多いなら、

シルバーのものを選んでみよう。


香水を変えてみよう。

食べるものを変えてみよう。

友達を変えてみよう。

読む本を、観る絵画を、口にする言葉を。


変化して変化して、毎日違う人になりたい。

自分なんかなくていい。

今日はパリジェンヌのように、

薄い化粧に赤い口紅だけ顔にのせて、

歩きやすいフラットな靴を履いて、

すみれの香りがする道の角を

曲ると、ピンクのパラソルを立てた

ジェラート屋さんでピスタチオ味を買う。


またある時は、19世紀の遊び人の

貴族のように

朝からシャンパンを

飲んで過ごしたい。


広い庭に友達を呼んで、緑に囲まれて

バトラーが持ってきたケーキと紅茶を

食べながら皮肉な会話に花を咲かせたい。

絵描きでも呼んで、絵を描かせよう。

夜は着替えたら夜会に行きたい。

年代物の葡萄酒をやりながら

チェスで遊ぶのもいい。


自分の気の向くままに趣味を楽しみたい。

聴いたことのない音楽をたくさん聴きたい。


知らない世界をもっと見るために、

ずっとずっと変化していきたい。


わたしは同じような毎日を送るのがきらいなのだ。

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