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『どうしてブレンは市警軍に捕まらなかったんですか?』

 翌朝、艦長室のモニターに映る美女は、怪訝そうな顔で艦長に問うた。艦長は普段通りの呑気な顔に呑気な声で返答する。

「どうやら軍人の息子が、像が消えたのは本物の妖精の仕業だと言い張ったらしくてね。息子の頭がおかしいと思われたくない父親が、老朽化で壊すことになっていたと言って揉み消したらしい。代わりの像も建てられる予定らしいよ。こっちはお金を払う必要もないし、これは奇跡ミラクルだね」

 ところどころ傷んでいるソファに座っているランスとレベッカは、苦心して笑いを噛み殺していた。昨日ブレンから、艦長には詳細を言わないようにと口止めされていたが、実はコッソリ教えていたのだ。艦長は非の打ち所がない完璧なポーカーフェイスで知らないふりをしている。

「彼は何を見たんだろうね? もしかして美少女戦士ベッキーが妖精に見えてしまったのかな? それともランスが精霊に見えたのかな? あるいは……いや、それは流石さすがにないか。ドワーフにしちゃ大きすぎる」

 腕組みしながらソファの肘掛けに腰掛けていたブレンは咳払いした。

「んなことより、何が『髭を剃っても怪しさは拭い去れないけど、せめて剃れ』だ! 忘れんなよアストラ」

『あら、髭って朝剃っても夕方には生えてくるでしょ? もうほとんど元通りじゃない。それに、その発案者は私じゃなくて、そこのポーカーフェイスさんよ』

「どこにポーカーフェイスがいるんだ?」

 ブレンは立ち上がると、艦長に唾を飛ばす勢いで迫った。

「テメェ、覚悟しろよ! 明日起きたらお前の髭剃りは予備も含めて全部ぶっ壊れてるだろうな!」

「聞いたかいアストラ? 経費の無駄遣いだ。ツッコミどころに困るよ」

『ブレン? 口の利き方には……』

「うるせーな、分かってるよ」

 必死で笑いをこらえるランスとレベッカに気付いたブレンは、バツが悪そうな顔で黙り込んだ。ランスはモニターに映るクールビューティに声を掛けた。

「アストラさん、一個だけ、どうしても言っておきたいことがあるんだ」

『何?』

「ブレン先生はめっちゃいい先生だった」

 ブレンは顔を背けた。

「口は悪いけど、優しくて超カッコいい先生だぜ」

 ブレンはランスの頭にチョップを喰らわせたが、それは昨日よりも幾分か手加減されていた。

「お前は余計なことしか言わねーな」






 ***おまけのカットシーン***


「今回ので思ったんだが……」

 艦長は執務机で指を組みながら真面目な顔で言った。

「艦内では、女子は学生服着用にしてもいいんじゃないかと思う」

「同意」

 ランスは神妙な顔で頷いた。

「んで、拳銃は腰のホルダーじゃなくて絶対領域に装備するように義務付ける」

 部屋の隅にいたアーノルドは「規程に反する」と呟いた。ブレンは「おいランス、いつの間にそっち側についたんだよ」と笑っている。

「制服が無理そうな女子は、教師の設定でいいんじゃないか? ほらブレン、君の彼女の白衣姿なんてどうだろう」

 ブレンは黙り込んだ。

「あれ、ブレンさん、意外とそういうのは興味ないの?」

「いや、ランス。この顔は既に白衣姿を見たことがある顔だ。そういうプレイをしたことがあるに違いない。まだ付き合って間もないのに君ってやつは……」

 ブレンは執務机を叩いた。

「どんな顔だよ! ちょっと想像してただけだ!」

「嘘くさいな。アーノルド、ウソ発見機能よろしく」

 アーノルドは何かの操作説明書をパラパラとめくりつつ答えた。

「こういった下らないことに使うために搭載されている機能ではない」






 ■■■次回予告■■■


ランス「なあレベッカ、アストラさんのマネやってくれよ。ニャーのほうで」

レベッカ「ちょっと、ランス。口のきき方がニャってニャいって、ニャン度言ったら分かるのニャ?」

ランス(悶絶する)

レベッカ「次回、ホワイト・チェリー・クロニクル。『That perfect woman has gone』 スケジュール表は、愛のメッセージ」

ランス「おい! 予告にパロディ入れんな!」




**あとがき**


バンプのorbital periodに収録されている『かさぶたぶたぶ』が好きです。

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