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 ランスが艦長室を出ていったあと、艦長は遅めの昼食を摂りに食堂に向かった。その姿を認めた小柄な厨房係は、明らかに不機嫌そうな顔をした。

「珍しいお客さんが来たね。いつものサンドイッチ?」

「今日のランチは炒飯なんだっけ? それを頼むよ」

 メイは既にカットされていた具材を中華鍋に投入した。鍋は冷めていたのか、水分と油分が音を立てはじめるまでには、やや時間を要した。

「今頃になって石像のことを言い出したのは何故だい?」

「みんなの話を聞いて思い出して、そうなんじゃないかって思ったの。あと黙ってることへの罪悪感。ねえ、なんでアウグスタを行かせるの」

「他に人員が割けない」

 具材が少ししんなりしてきたところを見計らい、メイは鍋にご飯を放り込んだ。

「ウソだ」

「ホントだよ」

「艦長は嘘つきだって知ってるもんね」

「いつ嘘をついたっけ?」

 メイは返答せずに大量の刻みネギを鍋にばらまいた。

「何するのさ!」

「つい一時間ほど前についたろ! 私に何も言わずに全部決めた! 嘘つきはネギだくの刑だ」

「だったらランスに言わずに、最初から僕に言えよ」

 卵が加えられ、黄金色に色づき始めた炒飯からは食欲がそそられるいい香りが漂ってくる。が、やはり緑色の面積が多い。艦長は悲しい顔でそれを見下ろした。

「ブレンか。あいつ、全部喋ったな。それにしてもこれはひどい。あんまりだ」

 それから艦長は急に真面目な顔になった。

「なあメイ。たまには顔くらい見せてやったらどうだ。家族は大事にするものだ」

「艦長には関係ない」

「あるよ。船員の問題は僕の問題だ」

 メイは、もともと細めの吊り目をさらに細め、緑色の炒飯が盛られた大皿を突き出した。

「さっさと食べて。いつもいつも時間外に洗い物を増やさないで欲しいんだ」

「ごめん。わざとじゃないんだ」

「どうだか」

 ほわほわと湯気を上げるネギだく炒飯を受け取った艦長は独りごちた。

「アストラがいなくてよかった。もしいたら、ネギ臭いってグチグチ言われるところだ」






***NGシーン(本編とは関係ありません)***


 ランスは顔をしかめた。

「えー……ただの悲しい話じゃん。炒飯の味が……」

「ごめんごめん。私も全然好きじゃないけど、昔話ってそういうものじゃない?」

 と、メイは苦笑した。

「そういや、赤鬼と青鬼って言やあ死に戻りのアレだよな」

「あー、そうね」

「メイドの二人組だね」

「せっかく二人いるんだからさ、ちょっと真似してくれよ。どっちがどっちでもいいから」

 レベッカとメイは一瞬黙り込んだ。

「そんなこと私がやるとでも思ってるのかしらバルス」

「だとしたら頭のネジが一本どころか十本ぐらい飛んでるわねバルス」

「待てよ……両方ラムちーかよ」

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