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アウグスタは、鍋から立ち昇る懐かしい香りを吸い込んだ。炒飯が母の味なら、カレーは父の味だ。
カレーはインディアに滞在したことがあるという父のこだわりの味だった。月に一度のご馳走で、小さい頃、叱られたあとも、理不尽な説教を受けたあとも、父が厨房に入ると黙って後ろをついていって手伝ったものだ。それは、儀式のようなものだったのかもしれない。
実は、あの石像の昔話には続きがある。メイは聞かされていなかったようだが、ハッピーエンド以外は受け付けないメイも、おそらく満足するはずだ。それを今夜メイに聞かせてやろうと、アウグスタは思う。
「後は自由におかわりしてください」
はーい、という元気な声を聞き、メイの分を皿を入れると、アウグスタは、さて何と言ってメイに渡そうかと思案した。ちょうどその時、艦長室にいるアーノルドから艦内放送が入る。アウグスタ宛に電話が掛かってきたらしい。
「艦長室の電話で折り返せばいい。一番近いだろ」
そう言うと艦長は無線のスイッチを入れ、メイを艦長室に呼び出した。
「二人で父上に言っておかないといけない言葉があるんじゃないか?」
「また余計なことを……」
アウグスタは、ランスが頷くのを見て、カレーの皿を持ったまま艦長室に向かった。
先に来ていたメイは、苦虫を噛み潰したような顔で、「あのヘッポコ、次もネギだくの刑だ」と呟いた。
電話口に出た母から、父が意識を取り戻したと聞いたアウグスタは、父に代われるかと訊き、メイに受話器を押し付けた。メイは相変わらず苦虫を噛み潰したような顔のままで、「助けてくれてありがとう」と絞り出すような声で言うと、アウグスタに受話器を突き返した。
『アウグスタ、これからはお前がメイを守ってやれ』
父が自分のことを本名――アウグストではなく、アウグスタと呼ぶのは、これが初めてだった。アウグスタは、十年間聞き慣れた言葉を父に告げた。
「分かってる。今から晩ご飯を食べる。今夜は、みんなの大好きなカレーだ。今回も勿論、自信作だぞ」
ある日、ゴブリン達の村に、旅する魔法使いが現れました。
夜な夜な村を歩き回ってすすり泣く石像に、みんなが困っているという話を聞いた魔法使いは、ふうむと唸ると、石像のところへ案内するようにと言いました。
魔法使いはその像を見ると、手にしていた魔法の杖をひとふりしました。
すると、あら不思議。
石になっていたはずの赤ゴブリンは、姿こそニンゲンのようになっていたものの、元のように元気に飛んだり跳ねたりできるようになったのです。
そうです、自分で自分にかけてしまった呪いが解けたのです。
そして、死んでしまった青ゴブリンも、ニンゲンに生まれ変わりました。
再会した二人は、死ぬまで仲良く暮らしたということです。
おしまい。
■■■次回予告■■■
ランス「なんか急に次回予告やれって言われたんだけどさ、喋れって言われたら喋りづれえよ」
シロタエ「ネタバレにならない程度に興味を持ってもらうのが目的でしょ」
ランス「えー……なあシロタエ。タイツとハイソックスなら、どっちが一般的なんだ?」
シロタエ「急に何の話なの?」
ランス「いや、制服の話」
シロタエ「ハ……あなたもついにそういう話題に興味を持つようになったのね」
ランス「う、うるせー!興味なんかねーし! 次回、ホワイト・チェリー・クロニクル。『妖精先生』これってさあ、美人の先生が出てくるってことか?」
シロタエ「ふん。期待を裏切られることは保証するわ」
***あとがき***
ハイティーン美少女がサブマシンガンとライフルを同時携行できるかについて、詳しいセンセーから教わったので、その部分に関して書き直す可能性があります。機種によっては可能ですが、アサルトライフルでよいんじゃないかと……
それと、WCC1と3を編集しなおしました。特に1は説明パートを削りまくって加筆していますので、この機によければ読み直していただけると嬉しいです!
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