第三章:殺意の侵食

 前を歩く神川へ絵夢が訊ねると、彼女は首だけでこちらを振り返り真面目な表情で口を開いた。


「それより、雨池さんにお話ししたいことがあるんです。少しお時間をいただけますか?」


「話? それは構わないですけど……」


 いきなり何だろうと思い、絵夢は僅かに首を傾げる。


 早く帰りたいわけではなかったのだろうか。


「深玖?」


 見ると、他のメンバーたちも不審そうな視線を神川におくっていた。


「とりあえず、落ち着いて話せるとこに行きましょう。悪いけど、みんなも少しだけ付き合ってくれる?」


「別に良いけど、どうしたの急に?」


 訊ねる天寺の声には答えず、神川は歩を進めていく。


 そんな彼女の真意が読めず互いに視線を交わしあうメンバーたちを一瞥してから、絵夢はふと背後に顔を向けた。


 振り向いたその先には、先程の場所から動くことなくじっとこちらを見つめる七見が、ただ静かに立ち尽くしていた。

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