第三章:殺意の侵食

「いえ、本当に大丈夫ですから。あまり気を遣われると逆にこっちまで恐縮しちゃいますよ」


 立場上仕方がないのかもしれないが、いい加減何度も頭を下げるのはやめてほしい。


 世話になったお礼を兼ねてと言っているのだから、その時点で妥協してもらいたい。


「七見さんの悪いとこだよね。なんかさ、人に頼ったら自分が駄目になるとか思ってるよね絶対」


 絵夢の返答にさらに萎縮した七見を、天寺は指さした。


「いや、そこまでは思ってないよ。ただね――」


「はい、わかりました。もう話はまとまったんだし、これで終わりにしましょう。ね?」


 言い訳をするような七見の声を、神川が強制的に止める。


 一瞬の間、七見は納得しきれない様子で神川を見つめていたが、小さく頷いて引き下がった。

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