第三章:殺意の侵食

「ん? みんなバラバラだよ。ここから一番近いのはわたしのアパートかな。逆に遠いのは鈴水。この子、千葉に住んでるから」


「千葉から通ってるんですか?」


 天寺が口にした情報に、絵夢は若干驚かされた。


 送り届けると言ってもせいぜい都内だけの話だろうと高をくくっていたのだが、どうやら考えが甘かったようだ。


「そ。まぁ、忙しい時期とかは帰れない日が続いたりすることもあるみたいだけど、そういうときはホテルとかわたしらの部屋に泊まったりしてるかな。いい加減、都内に引っ越せば良いのにって言ってるんだけどね。本人は踏ん切りがつかないみたい」


「踏ん切りとかじゃなくて、住みたい部屋が見つからないだけです」


 こちらを見上げ、天寺の言葉を訂正する日向。


「草本くん、後は勝手に帰るから待たなくても良いってさ。とりあえずこのまま解散にするけど、くれぐれも雨池さんに失礼のないように。雨池さんと、嶺垣さんも、どうかみんなをよろしくお願いします。自分が不甲斐ないばかりに面倒なことをさせてしまってすみません」

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