第三章:殺意の侵食

 そこまで話して、絵夢は口を閉ざした。


 これ以上は気の利いた憶測が思いつかない。


「素晴らしいですね。なかなかの洞察力だと思います」


 真剣な表情だった霧洲の顔に笑みが浮かぶ。


「いえ、単なる思いつきです。警察のみなさんもこれくらいのことは既に考えているんじゃないですか?」


「ええ、まぁ。一番あり得そうな可能性ですからね」


 乗り出していた身を引いて、霧洲は背もたれに寄り掛かった。


「とりあえず、聴取はこれで結構です。あとは別室で簡単な身体検査を受けていただければ、自由に帰宅してくださって構いません」


「もう良いんですか?」


 想像していたよりもあっさり終わり、少し拍子抜けしてしまう。


「大丈夫です。ただ、また近いうちにお話を伺わせていただくかもしれませんので、そのときはよろしくお願いします。……あと、これを」


 言って霧洲は名刺を差し出してきた。


「もし何か思い出したりしたときには、こちらへ連絡をください」

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