第三章:殺意の侵食
「……さぁ、僕には何とも言えません。特に怪しく感じた人はいないですし、犯人の見当もつきませんから。ただ、あえて言うなら……」
「何です?」
逡巡して言葉を止めた絵夢へ、霧洲が僅かに身を乗り出して先を促す。
「犯人は、高い確率でライヴ関係者の中にいるでしょうね」
「何故、そう思いますか?」
「理由は単純です。光野さんはマジックに使う手錠の鍵を、別のそっくりな鍵にすり替えられていたため亡くなったわけですよね?」
「そうです」
「それはつまり、犯人はその鍵の在り処や形状をそれなりに詳しく把握していたことになります。手品師が一般人に小道具を公開することは基本的にないらしいですから、お客さんや部外者がそっくりな鍵を用意して誰にもばれずにすり替えるというのは難しいのではないかと」
「確かに……」
「それに、的場さんが殺されたことに関してもそうです。あの時間帯に的場さんが一人で控え室に籠っていたのはたまたま仕事が溜まっていたからで、あくまで偶然です。それを事前に予知して、あまつさえ周囲に存在をあやしまれず殺害を実行するのは部外者には困難なはず。むしろライヴ関係者の中に実行した者がいると考えた方が自然な気がします」
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