第三章:殺意の侵食

「そちらの質問は、それだけですか?」


「もう一つだけ」


 絵夢は人差し指を立ててみせる。


「的場さんを殺す際に使われたとされる凶器なんですが、結局どのような物なのでしょうか?」


「まだはっきりとはわかりませんが、裁縫で使われるような針ではないかと考えています。その針に何らかの毒物、例えばニコチン毒のようなものを塗っていたのでしょう」


「その針は、まだ発見されていないんですよね?」


「ええ、残念ながら。細い針のような物ですからね。隠せる場所なんていくらでもあるし、最悪な場合犯人は既にトイレ等に流してしまっているかもしれません。重要な証拠になる物ですし、こちらとしても本腰を入れて探し出します」


 途方もない話だな、と絵夢は感じた。


 どれくらいの人数で捜索するつもりかは知らないが、この広い敷地内からたった一本の針を探し出すのはかなり骨が折れそうだ。

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