第三章:殺意の侵食

「つまり、ショーの最中に客席を離れていたとしても雨池さんたちは気付かなかった」


「ええ」


 言われてみればそうだな、と絵夢は思った。


 影宮が座っていたのは一番端の席。


 ショーが盛り上がっている真っ最中ならばこっそり抜け出すことも不可能ではないのだ。


 そしてそうなった場合、


(理論上、影宮さんにも的場さんを殺害できたということになってくる)


 普通に考えて、疑われている容疑者の中では唯一部外者であるはずの影宮が犯人というのは、少し想像しにくい。


「あの、僕からも質問させてもらって良いですか?」


 遠慮がちに手を上げて、絵夢は霧洲の表情を窺う。


 警戒するような視線を返してくる霧洲が僅かに頷いた。


「何ですか?」


 何を訊ねてみるべきか。


 一瞬だけ考えて、絵夢はすぐに口を開いた。

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