第三章:殺意の侵食

 小さく一礼して、中へ入る。


 部屋の中はレイニーが使っていた控え室とほとんど同じ作りになっていた。


 ここも、普段は出演者のための控え室として使用されているのだろう。


「どうぞ、座ってください」


 中央に設置されたテーブルの前に霧洲が座っている。


 その正面に腰を下ろして、絵夢は一度だけ咳払いをした。


「あまり長々とやるのも申し訳ないので、早速始めましょうか」


 姿勢を正して告げてくる霧洲に、頷きを返す。


「はい」


「雨池さんは、殺害された二人と過去に面識はありましたか?」


「いいえ、今日初めて会いました」


「光野さんのショーを観に行かれたりしたことはないんですか?」


「はい、一度もありません。正直、テレビに出演していたことも知らずにいたくらいですので」


「今日のライブには、嶺垣さんから誘われて来たと聞いていますが」


「そうです。僕個人としてはアイドルに全く興味がないので、自分一人の意思でこういった場所へ来ることはありません」

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