第三章:殺意の侵食

「鈴水が光野さんの控え室に行ってないって言うなら、他の誰かがハンカチを落としたってことでしょう? そう考えると、一番怪しいのは的場さんを殺した犯人しかいないじゃない。きっと、鈴水に罪を被せようと考えて、誰もいない隙にハンカチを盗んだんだよ」


「そんな……、犯人がこの部屋を出入りしてたって言うの?」


 身体を強張らせ、羽舞が言う。


「たぶんね。あり得ない話じゃないんじゃない?」


 横目で羽舞を見つめ返しながら、天寺は肩を落とすように息をついた。


 そこで一旦会話が途切れる。


 静寂のせいでやけに大きく聞こえる時計の音に、意味もなく焦燥感が込み上げてくる。


 そんな不快感を拭うため、絵夢は一つ気になっていたことを訊ねてみることにした。


「あの、レイニーのメンバーは過去にも光野さんと共演したことがあるんですよね?」

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