第三章:殺意の侵食

 そっと日向の頭に手をやると、七見は優しく言葉をかけた。


 そんなマネージャーの顔をすがるような視線で見上げ、日向はぎこちなく頷いた。


「……はい」


「それじゃ、日向さん。こちらへ」


 霧洲に促され、沈んだ足取りで部屋を出ていく日向の背中を全員が見送る。


 扉が閉じその姿が完全に見えなくなると、七見はすぐに神川へと歩み寄っていった。


「深玖ちゃん、本当に日向ちゃんは的場さんのいた控え室には行ってないんだね?」


「はい」


 こくりと頷く神川。


「それなら良いんだけど……、あのハンカチはどういうことなんだろうな」


 神川の返事にほんの一瞬だけ安堵した様子の七見だったが、すぐにその顔を曇らせる。


「犯人だよ、きっと」


「え……?」


 まるで独り言を呟くかのように、天寺が口を開いた。

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