第三章:殺意の侵食

「それ、あたしのですけど……」


 小さく手を上げて告げる日向に視線が集まる。


「間違いありませんか?」


「はい、あたしがいつも使ってるハンカチです。それ、お気に入りなんですよ」


 確かに、彼女になら似合いそうだ。女の子らしくてしっくりくるイメージがある。


「ヒマワリって、漢字だとあたしの名字の日向にそっくりじゃないですか。だから何となく親近感みたいなのが湧くんですよねぇ」


 ヒマワリは漢字で書くと向日葵だったか。


 絵夢は頭の中で文字を思い浮かべてみた。


(確かに似てる)


 人懐こく活発な彼女に、夏に咲くヒマワリはお似合いかもしれない。


「このハンカチは、今日も持ち歩いていたんですか?」


「はい。でも、今日はバックにしまっていたはずなんですけど、おかしいですねぇ……。どこに落ちてたんですか?」

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