第三章:殺意の侵食

(しかも、ただ殺すだけじゃない。光野さんに関してはあまりに殺し方が残虐だ)


 それ相応の恨みがなければ到底あんな殺し方はできない。


「絵夢さん……」


 ふいに、嶺垣の声が耳に入った。


 声のした方向へ顔をやると、若干疲れた様子の助手がこちらを見つめていた。


「嶺垣くん、大丈夫?」


 距離にすればほんの二、三歩程度離れているだけだ。


 意識しなくともお互いの声は普通に届く。


「はい。ちょっと待ち疲れしてますけど、平気です」


 答えながら、嶺垣は軽く微笑んでみせる。


「それより、いつまでこのまま待たせるつもりなんでしょうね?」


「うん。僕も同じ疑問を抱いてたところだよ」


 言って、絵夢はもたれていた壁から背中を離した。

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