第三章:殺意の侵食

        【1】



 控え室に待機させられてから、もう一時間近くが経過した。


 絵夢が時計を確認すると、午後四時を少し過ぎたところだった。


 通路からは時折誰かの歩く音や話し声が聞こえてくるが、絵夢たちのいる控え室へ入ってくる気配はない。


 簡単な事情聴取をすると言われてから、まさかこんなに待たされる羽目になるとは。


 うんざりする気持ちを無理やり押し込め、入口の扉へ視線を移す。


(どこまで調べが進んでるんだろう)


 もう犯人を特定する何らかの手掛かりを見つけたりしているのだろうか。


 必要以上に深入りしない方が良いとわかっていても、ついつい事件のことを考えてしまう。


 何故、犯人はあの二人を殺害したのか?


 事前に手錠の鍵をすり替えていたのなら、計画的な犯行とみて間違いない。


 そう。犯人は決して突発的なものではなく、確実な殺意の元にあの二人を殺しているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る