第二章:殺意の蹂躙

 どこかに隠れているのか、それとも素知らぬ振りをして堂々と人前に姿を見せているのかはわからないが、警察が建物内にいる関係者たちを解放してしまえばそれに紛れて犯人も自由の身となってしまうのだ。


(きっと、犯人はそれを望んでいるはず)


 この後に始まる事情聴取や現場検証の中で、大きな進展が果たしてあるだろうか。


 もし何の進展もなければ、この事件はその分長引くことになってしまう。


 嫌な方向へ逸れはじめた自分の思考にため息をつき、絵夢はそこで考えを中断した。


(そもそも、これは僕がどうにかする問題じゃあないか)


 依頼を受けたわけでもない事件にあまり首を突っ込み過ぎるのは得策ではないだろう。


 事件の真相は気になるが、警察の指示に従い最低限の協力をしておくのが無難。


 それが、一番現実的な判断だ。


 じっと床を見つめながら、絵夢はひとまずそう結論を下した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る