第二章:殺意の蹂躙

 少しは気分が落ち着いたのか、天寺が青白い表情のまま口を挟んできた。


 ひょっとしたら、無理矢理気を紛らわせようとしているだけかもしれないが。


「まぁね。俺、協調性ないんだよ、たぶん。だから一人で行動するの」


 そんな彼女を気にしてか、草本はおどけたような口調で言葉を返す。


「あー……、確かにそれは言えてるかも」


「あれ? 否定してくれないの?」


「だって、否定する部分ないし」


「酷いなぁ」


 あっさりと言われ、草本は首を横に振りながら苦笑する。


 天寺と他愛のない会話を続ける草本の目線が、時折羽舞と神川へ向けられていることに絵夢は気づいた。


 気になってはいるが、どう声をかけてやるべきか迷っている。


 草本の態度から、そんな風に感じ取る。


「あのぅ、絵夢さん」


 二人のやり取りをぼんやりと眺めていると、いつの間にか日向が絵夢へ顔を近づけてきていた。

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