第二章:殺意の蹂躙

「それって……」


 弱々しく掠れた声が、鏡台の方から聞こえた。


 全員がそちらへ振り向くと、天寺が顔を上げて霧洲を見ていた。


「的場さんを殺した人が、手錠の鍵もすり替えたってこと?」


「はい。現段階ではそれが一番可能性が高いでしょうね」


「それじゃあ、何? わたし達の側に二人も人を殺した犯人が紛れてるってことなの?」


 その言葉で、部屋の空気が固まったような錯覚を絵夢は感じた。


 すぐ近くに殺人犯がいる。


 二人の死が本当に殺人によるものだとすれば、必然的にそうなってしまう。


 そのことを頭で理解したのだろう、部屋にいる全員がそれぞれの顔を見つめあい、それから霧洲の方へ視線を戻した。


「はっきり言えば、そうなりますね。もちろん、既に犯人が逃走したということも考えられますが、今のところ周囲に怪しい人物を見かけたといった情報は入っていません」

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