「違います。本物そっくりの別の鍵とすり替えられていたからです」

「ああ……そうか」

　そこまでの話で、絵夢は霧洲の言おうとしていることを全て理解できた。

「何がそうか、なんですか？」

　隣にいた嶺垣が絵夢の呟きに反応する。

　それに倣うように霧洲も絵夢を見たので、ひとまず今浮かんだ考えを話してみることにした。

「つまり、光野さんは初めから手錠を外すための鍵をポケットかどこかに入れて隠していたというわけですよね？　大掛かりなマジックをするという先入観を与えることにより、持っている鍵で普通に手錠を外すといった一般的な考えをあり得ない手段として思い込ませる。本当は、そういうカラクリだったのではないでしょうか？」

「そうです。しかし、光野さんが隠し持っていた鍵は何者かによって偽物にすり替えられていたため、手足を縛る手錠を外すことができなかった。そして、そのまま落下してしまい、あの惨劇を招いたわけです」