第二章:殺意の蹂躙

「なんてことだ……」


 小さな声で、七見が呻く。


「よりによって、殺人事件なんて……」


 まるで苦しそうな様子で息を吐き出すマネージャーを、何も言えぬままレイニーメンバーが見つめる。


 レイニーのライヴで、殺人事件が発生。


 下手をすれば一、二時間後にはマスコミにより世間へこの情報が流されるだろう。


 これが事故なら、まだ少しは救いがあったかもしれない。


 しかし、殺人となれば話題性も一気に上がり望まれぬ形でレイニーたちの知名度も広まることになる。


 明日の朝には事務所の前に報道機関が群がるのかもしれない。


 そうなれば、彼女たちの活動はしばらく休止せざるを得ない可能性が出てくる。


 この瞬間、マネージャーである七見の意識はこれらの問題をいかに回避していくのかに向けられているのだろう。

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