第二章:殺意の蹂躙

 そして、それから更に一時間ほどが過ぎた頃、霧洲とその部下と思われる若い男が控え室へとやってきた。


 その場にいた全員が一斉に二人へ視線を向けると、それに応えるように霧洲が口を開く。


「申し訳ありませんが、皆さんにはまだしばらくこの部屋で待機していただきます。ちょっと厄介なことになりまして……」


「厄介なこと? いったい、何があったんです?」


 不安を滲ませた声で、七見が訊ねる。


 霧洲は逡巡するように一度口を閉ざすと、部屋にいる全員を一瞥した。


 それから、静かに言葉を紡ぐ。


「はっきり言います。……先程亡くなられた光野 雫さん、そしてマネージャーの的場 裕太さん。この二人は、何者かによって殺害された可能性が極めて高いことがわかりました」


「え……?」


 戸惑った様子で話を聞いていた日向が、掠れたような呟きを漏らす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る