第二章:殺意の蹂躙

 絵夢の指摘に、霧洲は眉をひそめながら光野の足首を見つめる。


「可能性はあるな……。うっかりこの鍵を落っことして、そのまま木箱の中に入ったのか?」


 その独り言のような呟きに、絵夢も胸中で同意する。


 ショーの最中、ステージの床はライトの関係でお世辞にも見えやすい状態ではなかった。


 それに加えてあの大音量だ。


 こんな小さな鍵一つ落としたくらいでは到底気がつかないだろう。


「こりゃ、悲惨な事故ってことで片がつきそうだな」


 遺体を突き刺す剣山を不快な表情で見つめながら、霧洲は立ち上がる。


 剣山の針は十二本。そのほとんどが光野を貫き赤く染まっていた。


「あの、刑事さん。会場へ来ていたお客さんはどうしたら良いでしょうか? やはり帰してしまっては問題があるんですか?」

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