第二章:殺意の蹂躙
「あれって、隠れる場所ないですよね?」
ステージに置かれた台を指さし、嶺垣が呆然と呟く。
「うん、ここから見た限りはないね」
紙袋を置いていた台は、下が骨組みだけになっており向こう側に立つ光野の足が見えている。
この状態で紙袋から出た場合、間違いなく人の目についてしまうだろう。
「これって、まさに不可能犯罪ですよね」
「犯罪ではないよ」
訳のわからないことを言い出す嶺垣へ適当に言葉を返して、絵夢は会場の反応を満足そうに眺める光野を見据えた。
彼女の披露するマジックは、予想していたものよりはるかに高いレベルの内容だ。
ここまで本格的なショーをこんな間近に観ることができたのなら、嶺垣に付き合ってこんな人口密度の高い空間へ足を運んだことにも割り切りがつく。
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