第二章:殺意の蹂躙
ステージ中央に置かれた巨大な風船。
そこに投げつけられた松明は、まるですり抜けるようにして風船の内部へと入り込んだ。
大きく膨らんだ風船の内部で、松明の炎がゆらゆらと人魂のように浮かびながら揺らいでいる。
アシスタントが、舞台袖から黒いカーテンのような布を持って現れた。
そのアシスタントと光野が風船を隠すようなかたちでその布を広げる。
この時点で観客席からは風船を確認することはできない。
その状態が約五秒ほど続いただろうか。
風船を隠す二人が、振り下ろすような動作で布を掴んでいた腕を下げると、そこにはもう巨大風船も中に入り込んだ松明も跡形なく消え去っていた。
またしても会場に拍手の音が響く。
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