第二章:殺意の蹂躙

 ゆっくりと、焦らすような動作で光野は風船から距離をとる。


「何をするんでしょうね?」


 絵夢に顔を近づけ、耳元で囁く嶺垣。


 ステージから視線を逸らすことなく首を僅かに傾げるだけで助手の囁きに答えながら、絵夢は光野の行動に注視した。


 光野が松明を握る右腕をすっと後ろに引いた。


 まるで槍投げをするときのような、そんなポーズだ。


「まさか……?」


 何をしようとしているのか察したのだろう。


 嶺垣が期待するような声を出した。


 笑みを浮かべたままの光野が、持っていた松明を勢いよく巨大風船へと投げつける。


 刹那、会場にざわめきが走り、直後にひときわ大きなBGMと盛大な拍手が巻き起こった。

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