第一章:殺意の萌芽

(いよいよ、か)


 ちらりと、私は時計を見た。


 午後十二時三十分。


 いずれ、この耳に届く歓声は恐怖に歪む悲鳴へと変わる。


 いきなりの惨劇に混乱する会場を想像して、私は一人口元を歪めた。


“レイニーの歌声も待ち遠しいとは思いますが、まずはあの有名なマジシャン、光野 雫さんによります驚異のマジックショーからお楽しみください!”


 進行役が淡々と司会を進めていく。


 目を閉じて、誰にも分からないように一度だけ深呼吸をした。


「うまくやらないと……」


 いよいよ、惨劇の舞台が始まるのだから。


 ぼそりと呟いて、私は静かに目を開けた。

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