第一章:殺意の萌芽

(せめて、全てが終わる間だけでも良い……)


 できることなら、捕まりたくなどはない。


 逃げ切れるようならそのまま逃げ切るつもりではいるが……もしそれが不可能ならば、せめて殺すべき連中を全て消し去るまでは時間を稼がなくてはならない。


 愛美の……、大切なただ一人の妹のために。


(悠長にはしていられない。警察や周りの隙を見て迅速に動かないと)


 特に、最後の一人……あいつを殺すときは。


 時間が開けば、それだけ自分が不利になるかもしれない。


 ぐっと拳を強く握り締める。


 会場の方から、大きなざわめきが聞こえてきた。


“さぁ! 会場のみなさん、大変お待たせいたしました!”


 舞台には男女二人の進行役がいたはずだ。


 聞こえたのは男の方の声だった。

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